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ヘブン・アンド・アース

ヘブン・アンド・アース

いつ紹介しようかと悩んでいた問題作です(苦笑)。なんと言うか、途中までわりと面白く見ていたのに最後で一気に唖然となってしまう怪作です。



唐の時代の中国(紀元700年頃)で、幼少の頃に遣唐使として渡来した日本人・来栖旅人はずっと唐の政府の刺客として働いていましたが、最後の仕事を終わらせたらようやく日本に帰ってもよいと言われます。その最後の仕事とは、元軍人で政府を裏切った李の暗殺。来栖はインドから唐王朝への献上品を積んで長安をめざす駱駝隊を護る李に近づき任務を遂行しようとしますが、同時にその献上品を奪おうとする一行が現れて次々に駱駝隊に襲いかかります・・・・・・。

中国西域の、所謂「絹の道」の風景は美しく雄大で目を奪いました。馬を生かしたアクションは中国版西部劇みたいな感じで、久しく見ない懐かしい雰囲気でした。だがしかし、ラストの部分で観客を1人残らず置いてきぼりにしちゃって、あさっての世界に行っちゃいます(笑)。『2001年宇宙の旅』も真っ青(っていうか、あれは意図の上に充分な計算の上に作られてるんで比べたら失礼ですね)。「な?何がおこったの?」としばし呆然としてしまいました。そのまま終わっちゃうし(苦笑)。

来栖旅人に扮する中井貴一が『日記―「ヘブン・アンド・アース」中国滞在録』というタイトルでこの『ヘブン・アンド・アース』のロケ日記を出しているので読みましたが、これが映画を見てると裏話としてはなかなか面白い本でした。読むといかに現場での作業が遅々として進まなかったのかよくわかります。監督以下スタッフが全体の工程と予算がいかに読めてないか、人の使い方を知らないかということが、ひしひしと伝わってきました。どうも脚本にあったシーンの半分ぐらいしか撮れてなかった模様。それじゃあ・・・・・・ねえ(苦笑)。途中、ついに趙薇(チャオ・ウェイ)がキレまくったことにも触れていますが、なるほど納得です。

私としてはラストが無かったことにすれば、チャオ・ウェイがふんだんに拝めたし(甲冑姿がかっこいい)、途中はそこそこ面白かったので印象はぜんぜん悪くは無い映画でした。ラストさえ無かったことにすればですけど。むしろ主題歌を歌う蔡依林(ジョリーン・ツァイ)のプロモーション・ビデオの方が、映画のいいシーンのよりぬきで楽しめるし、うまくまとまってるような気さえします。ということで人それぞれ好みがあるので一概には言えませんが、私的にはあまり普通には人にはお薦めできませんので、見る時は心してかかるように。チャオ・ウェイのファンは、見ても多分損はないです(笑)。でもこの映画の撮影のために中国中央電視台の大作テレビドラマ『『射[周鳥]英雄伝』』の出演(黄蓉役)を断ったのは残念ですねえ。

ちなみに音楽は『ムトゥ・踊るマハラジャ』A.R.ラフマーンで、「絹の道」の音楽にはぴったりでした。この人の父親がインドにおける冨田勲みたいな存在だったとは知りませんでしたけど。

ところで来栖旅人を見て、『英雄 HERO』の秦王に似てると思ったのは私だけ?


【ヘブン・アンド・アース(天地英雄/WARRIORS OF HEAVEN AND EARTH) 中国】
by santapapa | 2004-10-26 21:40 | 香港(中国・台湾)映画
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