サラヴァ SARAVAH 祝福
ピエール・バルーが初めて監督をした、ブラジル音楽への私的旅行ドキュメント
1969年 ブラジル
私的旅行ドキュメントという言葉が似つかわしいほど、手カメラによる映像とほとんど手を加えていない編集、素材をそのまま放り出したような映画なのです。それがなぜ人を魅了するのかと言えば、出演陣とそれを取り巻いている空気でしょう。バーデン・パウエル、マリア・ベターニャ、パウリーニョ・ダ・ヴィオラ、ピシンギーニャ、ジョアン・ダ・バイアーナ、マルシアなどと言った巨匠たちが歌い弾く姿は、今の時代にあってはかなり貧弱な映像でありながら、貴重な映像でかつ素晴らしい音楽を届けてくれます。サンバ、ボサ・ノヴァ、MPB。それらがサウダーヂのにおいと共に空気を伝えてくれます。
ギターに合わせて皆の歌が重なっていく場面、歌のバックにトロンボーンが艶かしくからんでいく場面、サンバのギターに合わせて打楽器と歌がどんどん高揚していく場面等々。目が釘づけになりながら、時々鳥肌が立つような、心が締めつけられるよな気持ちを何度も感じたのはこの映画でした。当時のブラジルは軍事独裁政権時代で、マリア・ベターニャがイギリスに亡命した兄カエターノ・ベローゾに触れて話す表情の影もにもハッとさせられます。
ピエール・バルーとバーデン・パウエルによる「サンバ・サラヴァ」で幕を開け、「サンバ・サラヴァ」で幕を閉じるこの作品は、ブラジル音楽好きには貴重な宝石のような映画です。
【サラヴァ(SARAVAH) 1969年 フランス】