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ソイレント・グリーン

ソイレント・グリーン

今年の3月に亡くなったリチャード・フライシャー監督のSFで、原作はハリイ・ハリスンの『人間がいっぱい』。この頃のSF映画としては『時計じかけのオレンジ』『赤ちゃんよ永遠に』などと共によく名前の知られている、「色褪せた近未来」を描いた作品です。



2022年、世界は人口過剰と食料不足にあえいでいて、住民が4000万にまで膨れ上がっり2000万人が失業しているというニューヨークでも、ソイレント社で作られるソイレント・レッド、ソイレント・イエローといった加工食の配給でかろうじて飢えをしのいでいました。街では不平不満の蔓延で、常に一発触発で暴動が起こりそうな様相を呈しています。ソイレント社では海のプロランクトンから作ったというソイレント・グリーンを開発、知事は週一回火曜日に配給すると発表します。なんとか安アパートの2階に老人のソル・ロス(エドワード・G・ロビンソン)と一緒に住んでいる市警察殺人課の刑事ソーン(チャールトン・ヘストン)は、ソイレント社の幹部のひとり、ウィリアム・サイモン(ジョセフ・コットン)が自宅で惨殺された事件を担当することになりますが・・・・・・。

『ミクロの決死圏』『ドリトル先生不思議な旅』を撮ったリチャード・フライシャー監督による映画。映画の進行は内容の割に淡々としている静かなるSFなので若干盛り上がりに欠けますが、原作と設定を変えたりもしていて、かなり印象に残る未来像を描いた映画でした。ソイレント・グリーンの正体、「家具」と呼ばれる女性や「本」と呼ばれる人の存在、暴動鎮圧のシーン、そして「ホーム」と呼ばれる施設など、設定の使い方がうまいです。小さい頃に見て衝撃的であった映画のひとつですね。ベートーベンの交響曲第六番「田園」やグリーグの「ペール・ギュント」からの「朝」が特に効果的に使われていたのも印象深いです。

2022年(原作では1999年)まであと16年ですが、今現在であってもWFP(国連世界食糧計画)ハンガーマップを見ていても判るように、飢餓率が2.5%未満という食糧事情に恵まれた国は、実は地球上にはそれほど多くもなく、飢えに苦しめられている人は多くいます。私はたまたま裕福な時代の裕福な場所に生まれ育つことができたのですが、そうでない人は世界中に多く、また食料自給率が非常に低い国に住んでいるのであれば、いつ何時飢えに遭遇することがあるかもしれません。人はパンのみで生くるにあらずというのは人間のこころにとっては真理のひとつだとは思いますが、衣食住の中で生命維持に必要な食べ物についてはやはり欠かすことはできません。パンがなければケーキを食べればという訳にもいかないものですし。


【ソイレント・グリーン(SOYLENT GREEN) 1973年 USA】
by santapapa | 2006-05-02 23:19 | 洋画一般
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