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ゆきゆきて神軍

ゆきゆきて、神軍

関東に住んでいると好きな小劇場のひとつが渋谷のユーロ・スペースです。こじんまりとした劇場ですが、ここでは『不思議惑星キン・ザ・ザ』など多くの映画との出会いがありました。『ゆきゆきて神軍』はその中でも強烈な印象に残った映画で、いろんな意味で衝撃的な1本でした。



この映画は監督の原一男が16ミリを使って撮った奥崎謙三という男を中心としたドキュメンタリーです。第二次世界大戦でのニューギニア戦の生き残りである奥崎は、当時の所属部隊で終戦後、日がたってから“敵前逃亡"の罪で二人の兵士が射殺された事件があったことを知ります。真相を究明するために元上官たちを訪ねた奥崎は暴力も辞さない強硬な態度で臨み、飢餓状況の中で人肉を食したことなどの証言を引き出していきます。カメラを意識してか、奥崎の行動はだんだんエスカレートしていって、ついには殺人未遂に及ぶことになります。

主人公である奥崎謙三の行動は独善的で暴力的でケレン味たっぷりなうえに唐突ですので、正義を掲げているにもかかわらず感情移入はあまりできません。しかし、異様な世界に見えるスクリーンの中でのことが、過去の出来事の証言も含めてまず現実におこったことであるに異様な重みを憶えます。

後味がいい映画ではありません。が、ただ戦争が何をおこしたのかということも含めて考えさせられることが多く、また今も考えつづけることの多い映画です。

【ゆきゆきて神軍 1987年 日本】
by santapapa | 2004-09-27 23:09 | ドキュメンタリー映画
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