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インドの仕置人

インドの仕置人

マニーシャ・コイララが好きな人が多いみたいでうれしいので、彼女の出演した映画を。と言っても、日本語タイトルが『インドの仕置人』。で、日本でのキャッチ・コピーがナマステ御免!世のため、人のため、男の恨みナイフに込め、悪いやつらは生かしちゃいかねぇ!」

いやちょっと、「ナマステ御免!」って?(苦笑)



村役人、警部、行政部長と賄賂をもらっている政府関係の役人が次々と刺殺されるという事件が発生。警察は少ない手がかりを元に犯人の足跡を追いますが、なかなかその実像が明らかになりません。実はその犯人の正体は齢75歳で白髪のセナパティ(カマラ・ハーサン)という老人。彼はインド独立運動に身を投じた清廉潔白の正義の人で、ある事件をきっかけに世直しを決意、インド古武術にある点穴とベルトに隠したナイフを用いて、賄賂をせしめる悪徳役人を闇で成敗してまわっていたのです。一方、かつて親父の厳格さに嫌気がさして家を出たセナパティの息子で32歳のチャンドゥ(カマラ・ハーサン)は車両検査員として賄賂をもらいながら出世を目指して彼を憎からず思っている有力者の娘スワプナ(ウルミラ・マートーンドガル)に取り入りますが、恋人のイスワリャ(マニーシャ・コイララ)と度々鉢合わせすることになって・・・・・・。

イロモノ全開みたいな日本語タイトルとキャッチ・コピーですが、中身は結構真面目なストーリー。『必殺仕置人』のインド版と言えるような内容ですのでタイトルとしては間違ってはないですな。マニーシャ・コイララとウルミラ・マートーンドガルというどちらも素晴らしく素敵な女優の共演。美人でセクシーでナイスバディな2人に挟まれるチャンドゥがうらやましいです(笑)。

また、主演のカマラ・ハーサンはで白髪のセナパティと息子のチャンドゥと一人二役をやってしっかりキャラクター分けをしているところはさすがですね。この映画でインドナショナル賞最優秀男優賞を受賞したそうですが、むべなるかなというところです。

ところがそういう素敵な2人の女優の存在を霞ませてしまうような強力なキャラクターが、本編の主人公、75歳の必殺仕置人セナパティ翁です。白髪の姿ながら矍鑠とした姿でターゲットに近づくと、『笑傲江湖』も真っ青の点穴で相手を動けなくして、ベルトから出したナイフで相手の胸部や腹部を刺して念を押すように数度押して刺殺。その間、無表情な顔、特に鋭い目がピクリともしません。しかもしわがれた渋く低い声がまた迫ってくるような威厳があります。結構その渋さがかなりかっこいいのですが、同時に怖えぇ~~~~~!賄賂なんてもらったことないですが、実際に会ったらちびっちゃいそうです。しかも最後のアクションでは空港の滑走路を舞台に大立ち回りを演じてジェット機を1機大爆発させちゃうし、もう平松伸二の「マーダーライセンス牙」や「ブラックエンジェル」も真っ青です。

その中にインドがイギリスの植民地から独立するための壮絶な戦いや、現実にバクシーシの国=インドでの賄賂が横行することに対する問題提起、夫婦・親子の愛情や父と子の意見の対立などを盛り込んだお話ですから、盛りだくさんです。ラスト近くでのセナパティと老妻、そしてイスワリャとの会話はなかなか心に染みましたわ。

それに加えて息子のラブ・コメディと動物ランドなシーンまで入ってくると、かなりおなかいっぱいですな。それでもってインド映画ですので、これにもちろん大人数のミュージカルのダンス・シーンが加わります。1フレーズごとに衣装が変わるは、歌詞に単にメルボルンとあるだけでわざわざメルボルンで撮影するはと、大サービス。さすがはおそるべし、インド映画。しかもCGによるモーフィングや画面合成をいろいろ「試してます」(笑)。音楽はおなじみA.R.ラフマーン。心くすぐるメロディにいつもの細部に凝ったアレンジで聴かせてくれます。前年の『ボンベイ』からヒット曲を出したのもあって、役所にマニーシャ・コイララが現れるシーンでは『ボンベイ』の「Andha Arabic」がちょこっと流れるし、ウルミラ・マートーンドガルがマニーシャ・コイララに初めて会った時にはからかうように「Kuchi Kuchi Rakma」(『ボンベイ』で、夫と子供が女の子がほしいとねだるシーンのかわいい曲)と歌うニヤッとさせられるシーンもあります。

いやあ、インド映画の奥深さを改めて認識させてくれる映画でしたわ。


【インドの仕置人(HINDUSTANI) 1996年 インド】
by santapapa | 2005-10-23 22:04 | インド映画
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