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黒いオルフェ

黒いオルフェ ニュープリント ポルトガル版

今年もリオのカーニバルの季節がやってきました。1月の川という意味のリオ・デ・ジャネイロ(ポルトガル語ではヒウ・ヂ・ジャネイロ)では1年に1度の大きな熱狂に包まれます。



田舎から従姉セラフィーナ(レア・ガルシア)を慕って船でカーニバルの前日にリオに来たユリディス(マルペッサ・ドーン)は、路面電車の運転手オルフェ(ブレノ・メロ)と出会います。仕事を終えたオルフェは婚約者ミラ(ルールディス・ヂ・オリヴェイラ)とともに街に行って、質屋からギターをうけ出して歌います。ギターと歌のうまいオルフェは村の尊敬を集めていて、その歌声を丘の従姉の家で聴いたユリディスはオルフェと再び出会います。翌日のカーニバルの練習の熱狂の中で二人は愛を感じます。その時、死の仮面をつけた謎の男(アデマール・ダ・シルバ)が現れてユリディスを追い、彼女は失神してしまいます。オルフェはユリディスを救うと自分の部屋のベッドに寝かせます。そしてカーニバルの当日、ユリディスは従姉の仮装を借りてオルフェが率いるエスコーラ(サンバ・チーム)の輪に加わりますが、そこにオルフェの婚約者のミラが、そして死の仮面をつけた謎の男が現れます・・・・・・。

ギリシャ神話のオルフェとユリディスの話を現代(1960年前後)のリオに舞台を移したヴィニシウス・デ・モラエスの戯曲、『オルフェウ・ダ・コンセイサォン』のフランスでの映画化です。

冒頭、アントニオ・カルロス・ジョビンの「フェリシダージ」をバックにリオの風景が映り、やがてサンバの音が混じってきます。「フェリシダージ」とは「幸福」という意味。「Tristeza na~o tem fim Felicidade, sim~」(悲しみは果てなく幸せは儚い~)という歌詞で始まるこの美しい曲がこの映画の世界にいざなってくれます。後に数え切れないほどのアーティストにカバーされるこの曲ですが、ブラジル音楽の持つ独特のサウダーヂ(切なくやるせない郷愁に近いブラジルならではの感覚)を感じる名曲です。

「オルフェの歌」としても「カーニバルの朝」という題名でも知られる「Manha de Carnaval」。この曲も後に数え切れないほどのアーティストにカバーされることになりますが、リオの日の出の光景と共に映画史上で最も美しい音楽のひとつだと思っています。

そして夜明け前、オルフェのギターを爪弾き日の出の光景と共に子供たちがサンバを踊るシーンでの「オルフェのサンバ」(Samba de Orfeo)は、悲劇であるこの映画に希望を見せて終わってくれます。

45年前も前の映画ですから今見るとかなり古っぽさが目立ちますし少々展開が退屈に思える部分もありますが、ボサ・ノバやブラジル好きにはたまらない映画です。昔見たのはフランス語版でしたが今はポルトガル語版も出ているのですね。

1999年に『オルフェ』というタイトルでリメイクされています(1950年のコクトーの『オルフェ』とはまた別物)。音楽を担当しているのがあのカエターノ・ベローゾで、映画にもちょっと出ています。


【黒いオルフェ(Orfeu Negro) 1959年 フランス】
by santapapa | 2005-02-06 03:22 | 洋画一般
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