未来世紀ブラジル

未来世紀ブラジル

原題はイギリスの映画ですので英語で「Brazil」、ブラジルの公用語であるポルトガル語で書くところの「Brasil」です。ただし、映画の中では地名としてのブラジルはまったく出てきていません。

その代わりと言うわけではありませんが、映画全編にアリ・バローゾが1930年代の終わりに作り大ヒットしたサンバの曲、「ブラジル(の水彩画)」((Aquarela do)Brasil)が流れます。この曲は1942年のディズニーのアニメーション、「ラテン・アメリカの旅」の中でも歌われていて広く知られています。



近未来のちょっと不思議などこかでのお話。そこでは情報省が力を握っていて社会を管理しています。街ではテロが横行し、虫がタイプライターの上に落下してTuttleがButtle見えたことによって、容疑者と間違えられたバトル氏が連れ去られてしまったりします。その場に居合わせた夢見がちのサムは、バトル氏の上の階に住むという夢に見た女性にそっくりなジルと出会います。謎の女性ジルに会いたいがためにサムは行動を起こしますが、その前に情報省が大きく立ちはだかります・・・・・・。

未来の話のようで実は現在にもどこかで少しずつ当てはまる話とも言えます。何も考えずに右向け右で生きてるラクちんさってありますから、なかなかそこから抜け出せないし、そこにいることに気づかなかったりしますしね。映画の中での独特の未来観と夢の場面が、映画を見終わった後もしばらく残るような感じです。

ちなみこの映画が作られた時のブラジルはどうだったのかというと、1964年にクーデターによる軍事独裁政権が樹立して、1985年に文民政権になるまでそれが続いていました。この間に未曾有の好況とオイル・ショックが引き金になった大不況を経験しますが、その間MPB(Musica Popular Brasileira)の雄であるカエターノ・ベローゾやジルベルト・ジルは逮捕収監されてその後ロンドンに亡命をしたりしています。このブラジルの当時の現状と、管理社会を描いた『ブラジル』というタイトルの映画がが無関係なのかと言われれば、あながちそうでもないような気もします。

またモンティ・パイソンの一員でもあった監督のテリー・ギリアムは映画製作中にトラブルに出会うことで有名ですが、この『ブラジル』では完成後にユニバーサルから映画の尺と内容にクレームがつき、USAでの上映を巡って映画史上「バトル・オブ・ブラジル」とも呼ばれる一波乱があったそうです。ユニバーサルではフィルムの編集によって90分のハーピーエンド版まで作っていたとのこと。結果的にはテリー・ギリアムの老獪な策が巧を奏して、長い対立の後に監督がアラン・スミシーになることもなく(笑)上映させるに至ったということで事無きを得ました。

そのために海外では映画にメイキングはおろか「バトル・オブ・ブラジル」のドキュメンタリーやハッピーエンド版ブラジルまでを収めた「Criterion Collection」という5枚組10面のレーザー・ディスクまで出ているとのこと(笑)。DVDにもなっているそうです。昨年日本でDVDを出す際にもCriterion側に同じモノを出したいと申し入れたところ、USA国内に限っても権利関係のクリアの手続きだけで1年以上かかったということで、メイキングを入れるだけで断念したとのこと。う~ん、残念。


【未来世紀ブラジル(Brazil) 1985年 UK】
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by santapapa | 2004-11-09 23:07 | 洋画一般
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