酔いどれ天使

酔いどれ天使

拝啓 大叔母様

もう数年ごぶさたしていますが、お元気されていますのでしょうか?

先日久々に『酔いどれ天使』を見ました。この映画を見るたびにあなたのことを思い出します。



小さい頃、夏休みに大阪に遊びに行ってはあちらこちらに連れて行ってもらい、大変かわいがってもらいました。幼稚園の頃に映画を見に連れて行ってくれるということでついていったのですが、とても見たかった『バンビ』の前を通り過ぎたのでどこに行くのだろうと思ってました。そうしたら着いたところがホールでの昔の映画の上映会。黒澤明の『酔いどれ天使』と深作欣二の『ジャコ萬と鉄』の2本立てでした。

「バンビが見たいよ~!見たいんだよ~!」
と泣きじゃくる私をなだめすかしながら、私を抱えるようにそそくさと映画館に入りましたよね。白と黒だけの画面の中で繰り広げられる話は大人の人が夜テレビで見ているドラマと一緒で、幼い私にはあまりピンと来ませんでした。頭の中は見たかったディズニーのアニメーションのことで頭がいっぱいです。ふと横の大叔母の顔を見ると、まるで宝物でも見つけたように画面を真剣に食い入るように見ていました。

『酔いどれ天使』で松永が死の間際に光明を見出すクライマックスの場面で、古い映画だったからでしょうが突然フィルムが切れました。場内はざわめき明かりがついて、大叔母は悲しそうにちょっとため息をついていました。5分ぐらいの中断後、少し前の場面からの再開。それでも映画の中に入っていた最中の中断だけに、少し残念だったみたいです。

当時はビデオもなく、その日にしか上映されない映画だったのでどうしても見たかったのでしょうね。齢を重ねるにつけ、だんだん大人の映画のよさがわかってきました。後に松永を演じていた「ミフネトシロウ」という人が三船敏郎だと知りました。

ちなみにもう何十年も経ちましたが、未だに『バンビ』を見ることはかなっていません(笑)。

これからだんだん寒くなりますが、ご健康には充分お気をつけください。

敬具




【酔いどれ天使 1948年 日本】
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by santapapa | 2004-11-06 05:32 | 邦画
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