ハンニバル (1960)

ANNIBALE

『ハンニバル』と言っても2001年のアンソニー・ホプキンスが出た映画でも、猟奇的な殺人鬼が出る映画でもまったくありません。世界史で誰しもが学んだ紀元前3世紀も末期のカルタゴの英雄、ハンニバルを描いた1960年の歴史スペクタクルです。私にとって『ハンニバル』と言えばこの映画だったもので、2001年のものはてっきりこのリメイクだとばっかり思っていました(苦笑)。



都市国家ローマは次第に力をつけて地中海の覇権を握ろうとし、紀元前246年にはカルタゴとのポエニ戦争が始まります。イベリア半島を制圧したカルタゴのハンニバル・バルカ(ヴィクター・マチュア)は連合軍の兵隊と運搬兼「戦車」である象を引き連れて、誰もが無謀と思われたアルプス山脈を越えてイタリア半島に攻め入り、ローマ軍を蹴散らします。ローマの元老院ファビアス・マシマス(ガブリエレ・フェルゼッティ)の姪シルビア(リタ・ガム)を捕虜にしたハンニバルは、自分の軍の強大さをローマ人に伝えるためにあえて彼女を釈放します。ところがそれを寛大な心と勘違いしたシルビアはハンニバルに心引かれるようになります。ローマを討たんとして進軍するハンニバルに会いたいがためにシルビアはローマを抜け出しますが、彼女を追ったローマ軍がハンニバルを襲うことに。危機を脱したハンニバルですが、シルビアはローマに連れ戻されて寺院に監禁されます。しかし、シルビアは寺院を抜け出ると・・・・・・。

歴史上の人物ハンニバルのローマ攻略の史実を元にした映画。この頃は一大スペクタクルの史劇がいくつか作られた頃で、1959年にリメイクされた『ベン・ハー』、1960年にスタンリー・キューブリック監督の『スパルタカス』と同時期です。1963年にはエリザベス・テイラー主演の『クレオパトラ』も作られていますね。

学生時代の歴史の先生が本当に歴史好きな人で、歴史上事件について熱く語り始めると止まらなくなる人でした。このハンニバルの物語にしてもそうで、まるで見てきたかのように熱心に語っていた(笑)のを思い出します。実際、このハンニバルのアルプス越えと、『国姓爺合戦』での鄭成功の鹿耳門の突破は、思いもよらない奇襲が鮮やかな歴史の物語として心に刻まれています。

映画では、前半いきなりクライマックスのアルプス越えです。第二次ポエニ戦争の始まりからのハンニバルの半生が愛を絡めて描かれています。膨大な制作費と10万人のエキストラを使ったという割にはスペクタクル度がちょっと乏しい気がするのが残念。音楽は『鉄道員』のカルロ・ルスティケリ。ハンニバルの物語は魅力的だけに、ぜひ再び映画化される日が来ればいいなあと思っています。

ちなみにローマ側からすれば憎き敵ですから、ハンニバル亡き後、ローマの人間によって彼は残虐だという噂が流布されたそうで、例のハンニバル・レクター博士の名前もそれが由来だとか。この映画では平和を願う人物として描かれています。

ハンニバルについては新潮文庫から出ている塩野七生の『ローマ人の物語』のシリーズの中で、第3巻から第6巻が「ハンニバル戦記」という副題がついています。この3冊だけ抜き出して読んでも非常に心踊る波乱万丈の物語になっていますので、興味があるようでしたらぜひ読んでみてください。学校の歴史の教科書の文字面からだけでは得られることの無い、濃厚な歴史のドラマを感じることができる良書です。


『ローマ人の物語 (3)~(5) ― ハンニバル戦記(上)~(下)』塩野七生
ローマ人の物語 ハンニバル戦記


【ハンニバル(HANNIBAL/ANNIBALE) 1960年 USA=イタリア】
[PR]
by santapapa | 2006-08-16 23:27 | 洋画一般
<< 日本のいちばん長い日 ストーカー (1979) >>