スローターハウス5

SLAUGHTERHOUSE-FIVE

心優しきニヒリストという惹句で語られることの多いカート・ヴォネガット・Jr。彼の戦争体験をベースして書かれたSFが『スローターハウス5』という作品でした。その原作を『スティング』、『華麗なるヒコーキ野郎』、『ガープの世界』のジョージ・ロイ・ヒル監督が映像化しています。グレン・グールドの音楽と共に映像が思い出される、そんな映画でした。



家の書斎で一心不乱にわが身に起こったことを打ち続けるビリー・ビルグリム(マイケル・サックス)。外では心配した娘のバーバラ(ホリー・ニアー)が夫と共にビリーを訪ねに来ます。ところがビリーは時間・空間を飛び回り、トラルファマドア星で女優モンタナ(ヴァレリー・ペリン)と戯れたかと思うと、第二次世界大戦でのドイツ戦線へ。かと思うと妻バレンシア(シャーロン・ガンズ)とのハネムーンを過ごしています。時空を次々に変えながら、ささやかな幸福と次々に襲い来る不幸の中でビリーは・・・・・・。

「ビルグリム=巡礼者」という名前を持った男の数奇な物語。話が関連性を持ったり持たなかったりしながら次々に時間・空間を飛ぶので、何の予備知識もなく見ればちょっと面食らうかもしれません。流れに逆らわずに最後まで見ながら、頭の中で再構成していくと案外わかりやすいのではないかと思います。

原作が発表された時期、そしてこの映画が作られた時期がベトナム戦争の最中であったことは無関係ではないようですね。作者が体験したといわれる13万人を遥かに超える死者を出した第二次世界大戦のドレスデンの無差別爆撃が物語の大きな中心にもなっています。また、監督のジョージ・ロイ・ヒル自身1922年生まれで、第二次世界大戦と朝鮮戦争に従軍した経験があることから、この原作に対する思い入れがあったのかもしれません。この映画に流れている起こってしまったことへの虚無感と不条理に襲ってくる不幸がずっしりと来るのは、そういったところも大きいのでしょう。

原作のイメージとは違う部分も多々ありますが、この映画は映画として好きな作品です。トラルファマドア星のセットについてはちゃちに思われがちですが、あれはあれでもいいような気がします。交合に期待するトラルファマドア星人には笑いましたけど(苦笑)。

グレン・グールドのピアノが実に適材適所に使われていて効果を上げています。ところどころにさしはさまるコーラスもまたよい感じでした。話が違いますが、かつてゼルダが原作小説を元に「スローターハウス」という曲を作ってましたね。

幸せとは、死とは、人生とはなんなのか、人の記憶に生きているものはなんなのか。見れば見るほど、少し切なくなりながら見終えることになった映画です。ラストはハッピー・エンドなのでしょうか?私は切なさを感じます。


【スローターハウス5(SLAUGHTERHOUSE-FIVE) 1972年 USA】
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by santapapa | 2006-07-24 22:44 | 洋画一般
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