ミッシング (1982)

Missing

映画を最も見ていた頃は、2本立ての映画を1日に2館ハシゴしたり駅前の500円で見ることができた名画座に通ったりしていました。もうひとつ楽しみだったのが12月に映画研究会が主催する映画マラソン。映画館を借り切って、夜8時から翌朝8時まで6本の映画をオールナイトで見るという過酷ながら素晴らしい催しでした。当時はビデオも無かったし、実は私はテレビを持っていなかったのでテレビのロードショー番組を見る頃ができなかったのです。

その時期に見た映画で、心に銃弾を打ち込まれたように印象に残った映画の1本が、この『ミッシング』です。



南米の某国で暮らすチャールズ・ホーマンが軍のクーデターが起きた日に失踪します。その妻ベスと知らせを聞いてUSAからかけつけたチャールズの父のエドワードは、必死でチャールズの行方を追います。かねてから息子夫婦の主義主張を快く思っていないエドワードは、ベスと反発しながら大使館に捜索依頼を出したり聞き込みをしたりします。なぜか非協力的な大使館の態度もあってなかなか捜索は進展しませんが、次第にこのクーデターの背後に母国であるUSAが絡んでいることが分かってきます。

南米某国となっていますが、誰が見ても1973年9月11日のチリの軍事クーデターを思い起こすでしょう。選挙によって社会主義政権を築いたアジェンデ政権に対して、USAの後ろ盾をうけたピノチェト元大統領が軍事クーデターを起こしたあの事件です。その後17年間大統領として独裁政治を続け、その間に3000人以上の反体制の人々が「行方不明」となったもまた有名な話です。

父エドワードを演じるジャック・レモンの演技がともかく素晴らしいの一言に尽きます。その前に見た『チャイナ・シンドローム』での演技も素晴らしかったのですが、終始ほとんど抑えた演技でも、表情で心が伝わってくる名演です。軍の発砲に居合わせて思わず「やめろ!」と暴れて殺されそうになり、「息子さんも前に同じようなことをしたわ」と言われた時のシーンが特に心に残っています。

また、戒厳令下でのこれでもかというような軍の殺戮と死体の山は、実話が元になっている事を知るだけに衝撃的でした。そしてこれは、これからも起こりえないことではないのです。

ちなみにこのblogでUSAをアメリカ表記しないのは、中南米の人と話をしていると「アメリカというのはアメリカ大陸だ。合衆国だけがアメリカじゃない」という意識が根強いのを知ったからです。

【ミッシング(Missing) 1982年 USA】
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by santapapa | 2004-10-10 21:24 | 洋画一般
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