わが谷は緑なりき

わが谷は緑なりき

『駅馬車』、『荒野の決闘』などの西部劇で有名なジョン・フォード監督がリチャード・リュウエリンのベストセラー小説を1941年に映画化したものだそうです。ウェールズの炭鉱町を舞台にした人生にとってとても大切なものを教えてくれる静かなモノクロームの映画です。



年老いたヒュー・モーガンは、長年住み慣れた谷を去る時に思い出が頭の中をよぎります。
50年前、イギリスはウェールズの炭鉱町に暮らすギリム・モーガン(ドナルド・クリスプ)一家は、末っ子でまだ10歳のヒュー(ロディ・マクドウォール)をのぞいて、父兄弟共にみんな炭坑で働いていました。家の事は厳格な父がすべて取り仕切り、子供達は父からいろいろなことを学びます。そんなある日、長男のイヴォー(パトリック・ノウルズ)は新しく村の教会の牧師に着任したグラフィード(ウォルター・ピジョン)の仲介でブロンウェン(アンナ・リー)と結婚すると、家を出て新居を構えます。ところがそんな炭鉱では夏の最中に経営者が給料の賃下げを勧告。モーガン家の息子たちは組合を組織して団交しようと息巻きますが、父は反対。結局、息子たちはヒューと姉のアンハード(モーリーン・オハラ)を残して、両親の元を去ってしまいます。鉱夫たちは真冬まで続く長い長いストライキに入り、ふとしたことででヒューの父は経営者側の人間であるように誤解されてしまいます。妻のベス・モーガン(サラ・オールグッド)は組合の集会に出向いて夫の無実を訴えますが、その帰りの夜道で凍った河に落ちてしまいます。一緒にいたヒューは必死で助け出しますが、ヒューは足にひどい凍傷をうけて歩くことができなくなってしまいます・・・・・・。

ウェールズの炭鉱町の中で、坑内の仕事に従事する家族の末っ子を中心に進んでいくお話です。何度か書いているように炭鉱を背景にした映画に名作は多いのですが、この映画もそのひとつ。ひとりの少年が大人になっていくまでの間に、家族の愛情や友情、勇気、そして人生を学んでいく様子が描かれたおとなの映画ではないでしょうか。見終わった後に身体の奥から暖かいなにかが湧き出てきて、しばらく残るような気持ちがする映画でした。

劇中の冒頭で「(ウェールズ人の)歌は生活から切り離せなかった」とありますが、いたるところで皆が一緒に歌う場面があるのが美しい。そして、嬉しくて同時に「共通の歌」というものを持たない私(阪神ファンを除く)にはうらやましい場面です。中盤、「結婚式に歌もなしか」と言われて皆が歌いだすシーンなんか、もうゾクッときますね。

冒頭、小さいヒューが眼を輝かせながらもらったこづかいを握り締めて、トッサル夫人の店に大好きなタフィーを走って買いに行きます。

 「ここのタフィーは口の中で長持ちするし、飲み込んでも舌の上にいつまでも甘みが残る。その味は今もなお舌に残り、楽しかった過去がよみがえる」

私にとってこの映画は、そのタフィーのようにいつまでもいつまでも味を忘れない映画であるように思えるのです。


【わが谷は緑なりき(How Green Was My Valley) 1941年 USA】


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by santapapa | 2006-05-22 23:53 | 洋画一般
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