つる 鶴東宝が吉永小百合の映画出演100本記念作品として、民話「鶴の恩返し」を元に市川崑を監督に迎えて作られた詩情豊かな映画です。 ある雪の夜に寝たきりの母・由良(樹木希林)と二人暮らしをしている貧しい百姓・大寿(野田秀樹)の家に美しい女性が訪ねて来ます。名はつる(吉永小百合)と言って大寿の嫁になるのだといい、たいそうな働き者でそのまま家にいついてしまいますある日、つるは由良が使っていた機織り道具を見つけると、自分が機を織ってみたいと言いだします。そして機を織っている時には、決してその部屋を覗かないでくれという約束をします。つるは食事も取らずに世通し機を織り続け、翌朝、素晴らしい布が完成しました・・・・・・。 有名な民話「鶴の恩返し」、もしくは「鶴女房」。今で言えば「落チモノ」とでも言うのでしょうか(苦笑)、そういう話です。愛と定めと欲について描かれたずっと語り継がれていく民話ではないでしょうか。その民話を元に詩情豊かに描かれている映画なのですが、風景と主演の吉永小百合が実に素晴らしい映画でした。 監督は卒寿を迎えながらも現在も現役で活躍中の、仕事を選ばないことで有名な(笑)市川崑監督。題材が題材だけに、また東宝の○○周年作品だけに、つるがアニメーション合成だったり、最後にマザー・シップが降りてきたりするんじゃないかと心配しましたが(笑)、素晴らしい文芸作品に仕上がっています。 原体験にあるせいもあるのでしょうが、雪の映るシーンが、平原や山や梢の様子がモノクロームを思わせながら淡い色彩が豊かな映像に見えて、目にまぶしいです。そして、農家の中とのコントラスト、素朴な風景。心が豊かになりそうに思える映像だと思えました。藁を叩く音や機を折る音も、なんだかしみこんでいく感じなのです。 そして美しく撮られている吉永小百合の、演技の素晴らしさにも改めて感服する映画です。情感豊かに立ち振る舞うさまには、ぐいぐいと引き込まれていくものがありますね。また脇を固める役者陣も川谷拓三、菅原文太、岸田今日子など、芸達者な面々が揃っています。 多少の欠点といえば、概ね好きなんですけど音楽はいい部分悪い部分があったりとか、演技で見せずにナレーションで説明的過ぎる部分が一部にあったりとかでしょうか。ちなみにナレーションは石坂浩二。ラストで「明日の朝晴れていたらまず空を見上げてください。そこに輝いているのは太陽ではなく、バルンガなのかもしれません」と言うのではないかと、ヒヤヒヤしました(ウソです(笑))。 しかし、最大の欠点は衝撃のシーンでしょう。ネタバレになってしまいますが、なんと驚くべきことに実はつるは大寿に助けられた鶴の化身だったのです。ところがこの映画でのその正体が判ってしまう衝撃のシーン。 な、なんすか?それ?オモチャのツルですか?(苦笑) いくら1988年であっても、それはないんじゃないかと思うような造型で(苦笑)。その後の吉永小百合の圧巻の演技があるからいいものの、そうでなければ脱力のままエンディング・タイトルを虚ろな目で見てしまっていたかもしれません(苦笑)。やはり、『レスリー・チャンの神鳥英雄伝』といい、『野蠻秘笈』といい、トリさんの造型は映画では鬼門なのでしょうか?この映画を香港でリメイクしたのが、『マジック・クレーン』だというのは、真っ赤なウソです(苦笑)。 ちなみに「鶴の恩返し」を元にした木下順二の戯曲『夕鶴』は團伊玖磨の手によってオペラになっていますが、これは日本を代表するオペラ作品にもなっていて、見られていない方はぜひ見られてみてください。私も昔、山本安英の主演で生で見ましたが、大変感銘を受けました。 【つる 鶴 1988年 日本】
by santapapa
| 2006-05-16 23:59
| 邦画
|
心に残る映画、ウキウキする映画、トホホな映画などについてをつれづれなるままにつづります。レビューは偏った主観なのでそこはそこで。トラックバックはカテゴリーの「トラックバックについて」参照。 by santapapa
以前の記事
カテゴリ
インデックス&掲示板
洋画一般 世界の映画 香港(中国・台湾)映画 インド映画 邦画 音楽(ライブ)映画 音楽ドキュメンタリー ドキュメンタリー映画 海外テレビドラマ 映画音楽 映画本 映画雑記 雑記 トラックバックについて タグ
SF(108)
イチオシ(49) アニメーション(40) 古装片(35) トホホ系【梅】(31) スーパーヒーロー(23) 怪獣映画(21) トホホ系【竹】(20) ミュージカル(15) 時代劇(12) cuba関連(11) トホホ系【論外】(9) 西部劇(8) トホホ系【松】(5) 最新のトラックバック
メモ帳
「だがっき」と「おと」の庵 サンタパパの打楽器と効果音のblog 社会の窓からこんにちわ 爆裂BLOG bombgirl 日刊【考える葦】Returns 映画のせかい2 映画チラシ集めました Honeywarの音楽古墳 天つば↑↓CINE TALK Happyおちゃのましねま シネマトリックス 風に吹かれて.. 瓶詰めの映画地獄 毎日が映画記念日 Albrecht Alternativity CINEMANIAX! のら猫の日記 CosiCosi.info ゆうけいの月夜のラプソディ Laughing Gnome 記憶鮮明、文章不明 Movies!! お気に入りの映画 愛すべき映画たち あいりのCinema cafe ともやの映画大好きっ! つれづれ草紙 にわか香港映画ファンノート 本日のレンタルASIA 見なきゃ死ねるか!.. 8ppy:電影電視備忘録 亜細亜的空間 SIVAのしっぽ DiaryDiary! Grico's House Lovely 電影生活 藍空 香港電影日記by香珠酒家 アスカ・スタジアム ただの映画好き日記 おやつ片手にダイエット つっきーの徒然草 青い島と街角2006 ROCK‘N‘HORROR MARYSOL のキューバ映画修行 まぜるなきけん any's cinediary It's a Wonderful Life Rabiovsky計画 OOH LA LA muelog ・僕らは映画で育ったんだ・ 100年旅をしていたい Every day of a MOVIE 超独断的番付 samuraiの気になるmono事 Web-tonbori堂別館 あのね・・・ カゴメのシネマ洞 こんな映画に誰がした? MOVIE-DIC 良い映画を褒める会。 a Black Leaf フォロー中のブログ
素晴らしき哉映画人生
六国峠@ドクター円海山の... 恋子の徒然映画日記 シネマ親父の“日々是妄言” 雑多な豆 *- Petit sou... web-tonbori堂ブログ the borderland 映画の雑貨店 Rock and Mov... こちら金町名画座/桑畑五... befounddead samuraiの気になる... 映画の心理プロファイル M’s Jumble-G... tropicalia Stampede ピカドン PICA-DON きょうのわたくし for once in ... ::: C_i_N_E_... Past Light ルナのシネマ缶 シネマの缶詰 えろぶろ at Exci... のんびり映画日記 艦長日誌 Rhymes Of An... シネマの手帖 +++映画の部屋+++ 面白い映画とつまらない映... 現代用語のクソ知識200... Afterhours *69 ☆ Inusukeなブログ ☆ 利用価値のない日々の雑学 ゴロゴロしあたー 気分はシネマニア(休止中) 日々こんなん日記 MOVIS 映画収集狂 老魔女の映画館 アジア的カフェ (By ... M-A-S MR2 No Music No ... メカpanda乗りのメデ... La Dolcé vita ささ、お茶でもいかが? みいと塁のおっさんな毎日 映画のへや 引き出しの中身 Osaka-cinema... bongokidの音楽コラム しねまだいあり~~ず。 太陽がくれた季節 映画共和国 哀愁のカルボナーラ 【徒然なるままに・・・】 のんびり列車 龍眼日記 Longan... たとえば風に向かって 2 Chupika Szpinak Mi cinema log 雑多な豆2 阪神守護天使・今日のおちちゃん 春巻雑記帳 その他のジャンル
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||