展覧会の絵

手塚治虫 実験アニメーション作品

友人であったビクトル・ハルトマンの遺作展に刺激されてモデスト・ムソルグスキーが書いたピアノ組曲「展覧会の絵」は、そのメロディが多くの人のイマジネーションを刺激するのか、リムスキー=コルサコフの編曲を皮切りに有名なラベルによる管弦楽版による編曲など、多くのアレンジ版が作られています。そして、その曲に着想を得て作られたのが手塚治虫によるアニメーション『展覧会の絵』でした。



音楽に着想を得たアニメーションといえば古くは『ファンタジア』がありますが、ある意味このアニメーションはその「展覧会の絵」版みたいなものです。ほとんどが曲の表題にとらわれず、自由な発想でアニメーションが作られているのでそこが楽しめます。

「プロムナード」は冒頭のみ美術館の実写で、その他は絵の移動にあてられています。このアニメーションで紹介されなかった絵も多く映るのが興味津々。その他は、最後の「キエフの大門」を覗いていろんな職業をいろんなタッチで描いて風刺あり、視覚の美しさありといった短編オムニバス・アニメーションになっています。

「小人」=>「ジャーナリスト」
「 古城」=>「人工造園師」
「テュイルリー」=>「整形外科医」
「ビドロ」=>「工場主」
「卵の殻をつけた雛の踊り」=>「ビートニク」
「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」=>「チャンピオン」
「リモージュの市場」=>「テレビ・タレント」
「カタコンベ」=>「禅僧」
「バーバ・ヤガの小屋」=>「兵士」
「キエフの大門」=>「フィナーレ」

これを見ると、改めて手塚治虫の感性と切り口の豊かさに唸らされました。それぞれのエピソードに合ったタッチと表現方法の使い分けにも脱帽です。このアニメーションはいろんな賞を受賞していますが、セリフが一切無く音楽だけのアニメーションでありながら、何を言わんとしているのかや、ストーリーがよく判るところが大きいのでしょう。「人工造園師」の手塚治虫らしさ、「整形外科医」のシンプルなタッチ、「ビートニク」でのかわいらしさ、特に「兵士」でも劇画タッチの線と紙芝居のような絵の切り替えによる緊迫した映像は印象的です。もっと多くの人に知られてほしいアニメーションですね。

この「展覧会の絵」の曲は冨田勲による独自のアレンジで、耳慣れないと違和感がある人もいるかもしれませんが、映像に似合っていて結構好きなアレンジです。この編曲も手塚治虫が急に依頼したのを恐るべきスピードで仕上げてきたというエピソードもあるとか。後に冨田勲はRCAからのmoogシンセサイザー多重録音作品の第二弾として採り上げていて、そこでのシンセサイザー・アレンジの見事さも世界的に評価されています。


【展覧会の絵 1966年 日本】

 
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by santapapa | 2006-05-03 23:57 | 邦画
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