ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団ということで、『ウルトラマン』の続き。春休み映画としてテレビの総集編版『ウルトラマン』を見た我々は、2本立てのもう一本の映画、『ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団』の幕が開くのを待ちました。こちらはテレビの総集編ではない、ということは新作映画である上に、タイトルからするとウルトラ6兄弟勢ぞろいという豪華なメンバーによる映画であることは間違いありません。そして、上映が始まりました。 終わった後、しばらくは放心状態で「今、見たのは何だったのだろう?」と心の中で反芻していました(苦笑)。映画についての情報もまだ少ない時代だったので、これがどういう映画なのかは見る前にはあまり知りようがなかった上にいきなり劇場の大画面で見てしまったので、その「ギャップ」に頭がついていかなかったのです(苦笑)。その破壊力たるやメガトン級(苦笑)。 ストーリーは、日照りで水不足に喘ぐタイが舞台。仏像を盗む泥棒を追いかけた少年コチャン(コ・ガオディンディ)は、泥棒に銃で撃たれて死んでしまいます。それをM78星雲から見ていたウルトラの母は、コチャンの仏教に対する信心に心を打たれて神話の出てくる白い猿の化身・ハヌマーンとして甦らせます。ハヌマーンは仏像を盗んだ泥棒を処刑したり、太陽に頼み込んで旱魃の被害を大きくしないように根回しします。ところがロケット工学の博士がタイの旱魃を解決するために降雨ロケットを打ち上げようとしたところ、失敗によりロケットが次々に爆発。地底に眠っていた怪獣たちが次々に目を覚まします! ともかく大前提である世界観がまったく違うのに面食らいました。元祖ウルトラマンは科学特捜隊という名前のチームが出ている通り、一般的な科学観に立脚した空想科学特撮番組でした。ところがタイを舞台にしたこの映画の基盤はヒンズー教の混じったタイ国民の9割以上が信心しているといわれるタイ仏教。仏教に対する信心が深いのに心打たれて生き返らせたり、仏像を盗み人殺しをした者は容赦なく私刑をしてもいいことになっています。怪獣なんかもうウルトラ6兄弟でフクロにしてもなんらかまいません。ロケット博士の助手は「科学だけに頼らずに仏さまの力を信じないと」といいますし、ハヌマーンは旱魃を救うために馬車に乗って宇宙空間を走っているおっさん=太陽を説得します(笑)。 こ・・・・・・これは我々が知っているウルトラマンとは違う・・・・・・(汗)。まだ、遠く遥かM78星雲の方が近いのかなと思ったのは内緒です。 私自身、少年少女向けの世界文学全集で白い猿の化身ハヌマーンの出てくる「ラーマーヤナ」を抄訳で読んだことがあるのですが、まったく相容れない世界観であるような(苦笑)。そしてそのハヌマーン。白い猿の化身ですから、見た目ウルトラ6兄弟とは違って怪獣に近いです。いや、でもそれは人(?)は見かけで判断してはならないということを戒めて考えなければならないでしょう(汗)。しかし、非常出口のサインみたい恰好で固定して飛ぶ姿を見ると、かっこよさに対する考え方が世界によっていろいろと違うものだと視野が広がりました(汗)。また、暇さえあれば桧山ダンスでも赤星ダンスでもない不思議な踊りを踊るのも謎を残しました。ううむう・・・・・・。 なお私のつたない文章ではこの喪失感は伝わりにくいと思うので、詳しい内容については以下の方々のblogなどを見られていただければ雰囲気はつかめるかと思います。 「社会の窓からこんにちわ」の「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団◇血に飢えた白い猿。」 「a Black Leaf」の「ハヌマーン / ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」 ちなみにこの合作のタイ側であるツブラヤ・チャイヨーと円谷プロダクションでは海外でのウルトラマンの版権の独占権を巡って裁判があり、円谷プロダクションが敗訴しています。 http://www1.odn.ne.jp/tazjim/mag2/g21_mag2_15.html http://www.translan.com/jucc/precedent-2003-02-28.html ツブラヤ・チャイヨーでは2009年に向けて、タイのアユタヤ郊外に29億円をかけて「ウルトラマンの街」という博物館を建設しようとしているとか。大きなハヌマーンも飾られるのでしょうか(苦笑)。 おまけ:「タイ人はジャイアンとウルトラマンがお好き?!」 【ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団 1974年 日本=タイ】
by santapapa
| 2006-04-02 22:37
| 邦画
|
心に残る映画、ウキウキする映画、トホホな映画などについてをつれづれなるままにつづります。レビューは偏った主観なのでそこはそこで。トラックバックはカテゴリーの「トラックバックについて」参照。 by santapapa
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