金星ロケット発進す

金星ロケット発進す

ポーランドでは教科書にも使われているSF作家の巨匠、スタニスワム・レム氏が3月27日に心臓病のため、84歳でお亡くなりになったそうです。ご冥福をお祈りいたします。

一般的にはUSSRのアンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』や、それをリメイクした『ソラリス』の原作「ソラリスの陽のもとに」に知られるSF作家ですが、そのようなシリアスな作品のもならず、一種独特の味を持ったアホなSFの「泰平ヨンの航星日記」とか、ロボット宇宙弥次喜多珍道中の「宇宙創世記ロボットの旅」みたいなユーモア感覚溢れる作品も世に送り出している幅広い芸風を持っていました。特に「宇宙創世記ロボットの旅」なんかは、日本だったらブラックホールのお茶漬け(爆笑)の石原藤夫が書きそうなSFマインドあふれるギャグがふんだんに楽しめて、その手のSF好きには必見です。確か昔は名前はスワニスワム・レム、もしくはスタニスラフ・レムという表記だったような記憶もあります。

そのスタニスワム・レムが1951年に書いたベストセラー「金星応答なし」を、1959年に母国ポーランドと東ドイツ(当時)で合作した映画が『金星ロケット発進す』でした。主演は国際的に活躍した日本人女優の谷洋子。



人類が月に基地建設した頃、ゴビ砂漠で巨大な隕石が発見されます。調べてみるとそれは人工的なものであることが判り、内部に音声が記録されているような磁気コイルが見つかります。国際機関の調査で言語の解読にあたりますが、調査は難航。その間に、隕石は金星から飛来したものであると判明します。にわかに金星に知的生命体がいる可能性が高まり、ソビエト連邦の宇宙船コスモクラトール号によって金星の探査に向かうことになります。乗員は、ソビエトの科学者アルセニエフ(ミハイル・ポストニコフ)を隊長に、ポーランドの電子技術者ソウティック(イグナチー・マホフスキー)、USAの原子物理学者ホーリング(オルドジフ・ルーケシュ)、ドイツのパイロットブリンクマン(ギュンター・シモン)、インドの数学者シカルナ(クルト・ラケルマン)、中国の言語学者チェン・イー(タン・フアタ)、ケニア人タルア(ユリウス・オンゲウイ)、日本人女医荻村すみ子(谷洋子)の8名。そして高性能ロボットのオメガが同行します。隕石群に遭遇しながらも金星に向かって進むコスモクラトール号。ところがその途中で磁気コイルに記録されていた言葉が解読されます。それには、金星による地球征服計画が秘められていたのです・・・・・・。

1959年の当時としては特殊撮影を駆使したSF大作です。原作「金星応答なし」は、かつては「死の金星都市」という題名で少年少女宇宙科学全集の一冊として岩崎書店からジュブナイル化されたものも出ていましたので、スタニスワム・レムという名前は覚えていなくても読んだ方はおられるのではないのでしょうか。映画は今の目から見れば古さは否めませんが、レトロ感覚溢れる宇宙船やセットなど、なかなか力を入れて作られていて夢を育みました。ロボットのオメガがアクセントとして効いています。また、登場人物もなかなか国際色豊かです。

ストーリーとしてもスタニスワム・レムらしいしっかりとした構成に、ミステリーとアドベンチャー的な要素もあって古さは感じるものの、ワクワクドキドキする映画になっています。そして、反核反戦を大きなメッセージとして打ち出してます。スタニスワム・レム自身あまり自作の映画化は好きではなかったように伝えられていますが、こういう作品もまた隠れた佳作としてあったことも将来に残ってほしいものです。


【金星ロケット発進す(MILCZACA GWIAZDA) 1959年 東ドイツ=ポーランド】
[PR]
by santapapa | 2006-03-29 23:36 | 洋画一般
<< 摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に マイ・フェア・レディ >>