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狼の紋章

狼の紋章

平井和正といえば『8マン』の原作や角川映画劇場用アニメ第1弾の『幻魔大戦』などで知られていますが、ハヤカワ文庫から出ていた狼人間である犬神明を主人公とするウルフガイ・シリーズも人気のある小説でした(ちなみにイラストは生頼範義)。トップ屋(って今通じる言葉かな?)の犬神明を主人公としたアダルト・ウルフガイ・シリーズと、もう一本高校生・犬神明を主人公としたウルフガイ・シリーズがあったのですが、後者の第一作を映画化したものが東宝のこの『狼の紋章』。犬神明に初主演の志垣太郎、敵役に映画初出演の松田優作を配した邦画テイストたっぷりの青春学園バイオレンス映画です。



アラスカで狼と一緒に走り戯れる子供。ところがいきなり現れたヘリコプターが銃を乱射しながら襲撃。少年の母は小屋もろとも爆破されて亡くなってしまいます。数年後、暴力で荒れる博徳学園高校の英語教師をやっている青鹿晶子(安芸晶子)は満月の光る夜の新宿でチンピラにからまれる少年を目撃。そのチンピラに無抵抗にナイフで深く腹を刺されて、それを見た青鹿先生はその場に気を失ってしまいます。三日後、博徳学園高校に犬神明(志垣太郎)という名の少年が転入してきて、青鹿先生のクラスに配属されます。その犬神明は新宿で刺された少年に瓜二つで、不審に思った青鹿先生は保健室で腹の傷跡を確かめようとしますが、ひっかき傷ひとつありません。青鹿先生のクラスでは、暴力団東明会の最高幹部を父に持つ羽黒獰(松田優作)が引きいる不良グループがあって、羽黒の子分の黒田(伊藤敏孝)たちは早速犬神明にリンチを加えますが、犬神明はそれをタフに受け流し無抵抗のまま抵抗しません。そんな中、羽黒のカノジョである小沼竜子(加藤小夜子)や校内暴力に反対する木村紀子(本田みちこ)らが、犬神明に興味を持ち始めます・・・・・・。

東宝が、ちょっぴりSFテイストの入ったピンキー・バイオレンスを作ってみたらこうなりましたみたいな映画とでも言いましょうか(笑)。チープさとエロティックさが1970年代らしい映画です。ストーリーは小説の映画化には珍しく結構きちんと原作をなぞって作ってますが、どこかでまったく別物になっているのはそのあたりのティストが大きいのでしょうか。チープと言えば、冒頭の「アラスカで狼と一緒に走り戯れる子供」は、実は「雪の長野で犬と戯れる子供」にしか見えないのもありますが、まあそれはいいとして。問題は見せ所の獣人化した場面ですよね。犬神明の部屋を訪れた青鹿先生の前で、見られたくない獣人化した姿がアップに! タ・・・タヌキのかぶりもの? かぶりもの然しているのはともかくも、オオカミに見えないところがなんとも(苦笑)。見ようによってはちょっとかわいいかも、と思ってしまいますが、本人が苦悩しているものでうかつに笑えません(笑)。そしてクライマックスでもこのタヌキのかぶりものが暴れます(苦笑)。

ストーリーは大部分が学園内ですので、当時の学園ものの雰囲気がプンプン。ただ、ほとんどが「何年留年してるねん?」って感じの老けた高校生だったりしますけど(苦笑)。野球場で集会をしている場面はずっと振り付けをやっている謎の応援団(しかも2管なのにブラスバンドの音(笑))に、当時でももう古いと思われる70年安保風のいでたちと、かなリシュールでした。

この映画がスクリーン・デビューになる当時24歳の松田優作は、セリフもまだ棒読みに近くすごく初々しいです(笑)。後半で見られる松田優作のフンドシ姿はこの映画でだけかもしれません(笑)。ヒロインの青鹿先生を演じる安芸晶子は、テレビでは『ミラーマン』や『ジャンボーグA』に出ていた市地洋子の旧芸名。美人女優ですが、原作が原作ですので18禁の俗に言う体当たりの演技をしています。そして、アダルト犬神明の代わりに出てくるトップ屋の神明には黒沢年男。これは結構食えない感じが上手く出ていて、それなりにハマっていました。伊達に齢は重ねていませんなあ。

ということでウルフガイを期待するとコケますが(苦笑)、B級青春学園バイオレンス映画として見れば平均点をちょっと下回る程度の映画ではないかと。DVDにはなりそうにないですけど(笑)。

しかし世の中と言うのは深くて広いもので、この2年後には今度は東映が、同じく平井和正原作のアダルト・ウルフガイ・シリーズから「虎よ!虎よ!」と「狼よ、故郷を見よ」をベースにした映画『ウルフガイ 燃えろ狼男』というのを作っています。未だビデオ化さえされていない映画ですが、なんとサニー千葉がアダルト犬神明を演じていて、内容はかなりトホホ臭のする作品だと噂に聞いていますので、ぜひともいつか見たいものだと願っています(笑)。


【狼の紋章 1973年 日本】
by santapapa | 2006-03-20 21:08 | 邦画
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