わんぱく王子の大蛇退治

わんぱく王子の大蛇退治

1958年の『白蛇伝』に始まった東映の長編マンガ映画も1963年の本作『わんぱく王子の大蛇(おろち)退治』で6本目。日本神話に題材をとって少年スサノオを主人公にしていますが、音楽に現代音楽の巨匠・伊福部昭を迎えて映像・音楽共に芸術性も高い長編マンガ映画になっています。



昔々、オノゴロ島というところにスサノオ(住田知仁)という力の強い腕白な王子がいて、いつも動物たちと仲良く遊んでいました。ところが母のイザナミが亡くなってしまい、黄泉の国の意味がわからない少年スサノオは母を捜そうと決心して船を作り、仲の良い兎のアカハナ(久里千春)を連れて島を飛び出します。荒れる海での怪魚アクルとの戦い、夜のオス国での兄ツクヨミとの出会い、火の国での暴れ者の火の神との戦いと大男タイタンボウとの出会いがあり、高天原に着いたスサノオは姉である光の神アマテラスに会いますが、そこではスサノオの失敗の連続のためにたまりかねたアマテラスは天の岩戸に入ってしまい、世界は闇に覆われます・・・・・・。

日本神話をモチーフとしているもののかなり自由な発想で作られたマンガ映画=アニメーションで、主人公のわんぱく王子スサノオからして褐色の肌で楕円顔、ちょうど暗黒低迷時代の阪神のエース藪恵壱に似た感じです。もっともスサノオは7回ぐらいまでほぼパーフェクトに抑えているのに突然連打を浴びたりはしませんが(苦笑)。動物たちも黒ウサギや虎やレッサーパンダなんかがいるし、島の植物も原色に近い明るい色使いでかなり南方系になっています。そのあたりの色使いは淡い色使いも混ぜながら全編を通していて、この長編マンガ映画ならではの色を打ち出しています。また、前年の『アラビアンナイト シンドバッドの冒険』とは一転してシンプルで独特な風貌のデザインによるキャラクターが目を惹きます。なぜ登場人物(アメノハヤコマという天馬を含む)がすべて短足なのかは不明ですけど(笑)。

またこの映画は伊福部昭の初にして唯一のアニメーション映画の音楽であり、伊福部昭の映画音楽を語る上で絶対に外せない作品になっています。この頃のアニメーション映画は劇中のほとんどが音楽に埋め尽くされていることが多く、この映画も例外ではありません。それこそ場面展開から効果音まで含めて画面にあわせた音が縦横無尽に響きわたり、映画音楽家としても大きな腕の振るいどころなっています。ここでも画面にシンクロして、ある時は力強く、ある時は繊細に響く伊福部サウンドは最大の効果をあげていて、氏の代表作のひとつとならしめています。後に「交響組曲『わんぱく王子の大蛇退治』」として編曲しなおし、日本フィルハーモニーの演奏で録音したことはうれしく、それだけの価値のある作品でした。また、この映画音楽では伊福部昭の作品の中でも数多くのパーカッションが使われていることも特徴的です。

映画の中では特に古代原始の舞踊をテーマにした天の岩戸のシーンが秀逸!アニメーションの独特の舞踊と伊福部昭の力強い音楽が相まって、素晴らしい場面を作り上げています。日本の誇るアニメーションの一場面として必見ではないでしょうか。そしてクライマックスのヤマタノオロチとの対決。今で言う怪獣ですからこれも伊福部昭の得意分野。重厚で荒々しいサウンドをバックに、スサノオはヤマタノオロチの8本の首を丁寧に1本ずつ倒していきます。キングギドラの2.67倍の数の首を持つヤマタノオロチですが、ここでのアニメーションの迫力と動きも当時として特筆モノです。ちなみに『三大怪獣 地球最大の決戦』(音楽はもちろん伊福部昭)でキングギドラが初めてお目見えをする一年前のことです。

ちなみにわんぱく王子スサノオの声を担当している住田知仁は『月光仮面 悪魔の最後』や『危うし!快傑黒頭巾』に出ていた子役で、後に芸名を風間杜夫と変えて活躍、『日本フィルハーモニー物語 炎の第五楽章』で主役の座を射止め、『蒲田行進曲』などに出演しています。


【わんぱく王子の大蛇退治 1963年 日本】
[PR]
by santapapa | 2006-02-16 23:58 | 邦画
<< ゴジラ (1954) 銀嶺の果て >>