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白い恋人たち/グルノーブルの13日

白い恋人たち

「白い恋人」というとよく友人が北海道土産に買ってくる(催促している訳ではない(笑))石屋製菓のお菓子ですが、「白い恋人誕生秘話」には、当時の石屋製菓の石水幸安社長の記憶のどこかに、グルノーブル・オリンピックの記録映画『白い恋人たち』があったのではないかと書かれています。また、冬季オリンピックの季節がやってきました。



この『白い恋人たち/グルノーブルの13日』は1968年の2月6日から2月18日まで、フランスのグルノーブルで行われた第10回冬季オリンピックの記録映画です。当時はあのブランデージIOC会長の元、37ヶ国の参加で6競技(スキー・スケート(スピードスケート・フィギュアスケート)・アイスホッケー・ボブスレー・バイアスロン・リュージュ)35種目が行われたそうです。フランスにとって冬季オリンピックは第1回のシャモニー・モンブラン大会以来44年ぶりにフランスで行われた大会で、ド・ゴール大統領の全盛期だったこともあり当時としては盛大に行われました。

私の場合は転校が多くてデラシネ体質だったもんで、高校野球やオリンピックなどで、地元を応援するといった習慣がまったくといっていいほど無く、テレビもあまり見ません。その割りに『民族の祭典』や市川崑監督の『東京オリンピック』なんかの映画は見ていますが、この映画もオリンピックの映画としては名高く、また一風変わった映画です。

監督は2年前に『男と女』で評判をとったクロード・ルルーシュ。映画の始まりで下手な歌と口笛をバックに(苦笑)、「この映画は記録映画でもスポーツ映画でも思想を持った映画でもない。ただの1本の映画である。~」というフランス語のタイプの文字が映りますが、確かに正確には記録映画とはいえないでしょう。系統立てて競技を映した編集にはなってはいず、気に入ったと思われる競技シーンのいろんなアングルからの撮影による抜き出し(短いながら迫力があり、また撮影のセンスが光ります)に加えて、リハーサルの模様や町のパレード、パーティやバンド演奏のシーンなどが109分という短いフィルムの中に押し込められています。クロード・ルルーシュによる、オリンピックをテーマにしたBGVと言っても間違いではないでしょう。そういえば、途中日本語が聞こえると思ったら4年後の札幌オリンピックに備えて、この大会には多くの日本人選手を送り込んでもいたのですね。

それに加えてBGV化を押し進めているのが、『男と女』でもコンビを組んでいた音楽担当のフランシス・レイですね。この映画のテーマ曲は世間一般によく知られているように、名曲中の名曲です。それが映画の冒頭、聖火リレーの映像にかぶってくる場面は息を呑むほどすばらしく音楽の効果が出ています。アレンジも含めて改めてフランシス・レイの天才ぶりに感心します。途中も数々の曲に映像が彩られ、中でもシャンソンのシニカルな歌詞に乗ると、映像に皮肉な色合いが出てくるところはフランス映画らしいところ。また、エンディングでは冒頭の有名なテーマ曲に歌詞がつけられていて、その曲と共に映画は終わります。

「13日間がすぎて 人々は帰ってゆく
 もとの生活の 日々の流れの中に
 フランスの13日間に だれもが恋をした
 一瞬たりとも 決して忘れない
 競い合った精神は いつまでも消えない」


ちなみにフランスではその1ヶ月後から学生ストや学生運動が全国に広がり、そのまた1年後の3月にはフランシーヌ・ルコントが亡くなっています。


【白い恋人たち/グルノーブルの13日(13 JOURS EN FRANCE) 1968年 フランス】
by santapapa | 2006-02-14 23:53 | ドキュメンタリー映画
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