隠し砦の三悪人喧嘩するほど仲がいいとはよく言ったもので、一緒に行動していれば意見の対立は出てくるものだし、ましてやお互いが本音が言える立場になれば言いにくいことも少なくなるでしょう。またそういう友人とは長続きするものです。 戦乱で世が乱れる戦国時代。秋月家は隣国の山名家に攻め込まれて敗れ去ります。この機に一旗挙げようと、秋月家と親交の深い早川家の百姓の又七(藤原釜足)と太平(千秋実)は家財を売り払い鎧兜を買って戦地に赴きますが散々な目にあって食うや食わずの落武者状態。そんな時、逃げ隠れている秋月家の世継である雪姫(上原美佐)を見つけるか捕らえれば報奨金が出るとの山名方の御触れの看板が立ちます。また、秋月城に隠された軍資金を探すために山名方は農民を使って城の中を掘らせます。ほうほうの体で逃げ延びて落ち合った又七と太平は薪の中から偶然金を見つけ、その刻印から秋月家の隠された軍資金だと気づきました。2人はそれを探して山分けにして山名領経由で早川に帰ろうと企みます。そんな2人の前に現れた屈強な男が真壁六郎太(三船敏郎)。六郎太は山間の謎の砦に2人を案内すると金を探すように命令します。そんな時、2人の前に若い女性が現れて・・・・・・。 黒澤明監督の娯楽時代劇。戦国時代を舞台にしているために、とても泥臭くてあまり爛熟しているような華やかさはありませんが、強いエネルギーを感じるような力強さがあります。主役は看板の三船敏郎というよりは、むしろ藤原釜足と千秋実が扮する一攫千金を狙うものの極めて小市民的な凸凹コンビの百姓でしょう。目先の欲に走り、現れた障害にうろたえ、仲違いをしたと思えば友情を確かめ合う2人の漫才的なふれあいが最初から最後まで通して描かれています。黒澤明、、菊島隆三、小国英雄、橋本忍の4人で頭を突き合わせて練りに練ったという 脚本が面白く、各人物のキャラクターがしっかり作られていいですね。今見るとモノクロの映画だけに若干古臭さを感じる部分もありますが、こんな時代劇がまた見てみたいのですが、もうかなわぬ夢なのでしょうか。 藤田進扮する田所兵衛と三船敏郎との槍の一騎討ちが大きな見所なのでしょうが、それ以外にも三船敏郎が馬に乗って雑兵を斬る躍動感溢れるシーン、早川国境の関所から逃げる時に馬で駆ける三船敏郎が走りながら片手で村娘を馬に引き上げ後ろに乗せるシーン!!など随所に見所もあります。特に印象的なのは山名の火祭りの場面ですね。私も幼少の頃は地元の祭りに参加したりしていて祭りは好きなのですが、歌い踊る祭りの持つ高揚感と官能が画面全体にあふれ出ていました。後の雪姫のセリフ(歌は勘弁してください(苦笑))にもつながってくる場面でもあります。 雪姫を演じた上原美佐は新人でデビュー作だそうですが、不動明みたいなメイクの眉(苦笑)と若さ溢れる素足が印象的です。セリフが廻しも『デビルマン』の主人公ほどではないにしても、かなり演技力としてやばいのにはちょっと困りましたけど(苦笑)、存在感はとてもありました。上原美佐は後に自ら俳優の才能に限界を感じて引退されました。 ところでタイトルは『隠し砦の三悪人』ですが、内容にはそぐわないような(苦笑)。そりゃあ、山名家から見れば悪人でしょうけど、そういう視点の映画でもありませんし。後の『スター・ウォーズ』にも影響を与えたと言われますが、なるほど言われてみればそういう気もしますが、あまり気づかなかったです。 音楽はこの頃の黒澤映画をしっかりと支えていた佐藤勝。力強く多彩な音色を使ったオーケストレーションで、風景や心象描写も細やかな音楽を全編に展開しています。 【隠し砦の三悪人 1958年 日本】
by santapapa
| 2006-01-14 23:53
| 邦画
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心に残る映画、ウキウキする映画、トホホな映画などについてをつれづれなるままにつづります。レビューは偏った主観なのでそこはそこで。トラックバックはカテゴリーの「トラックバックについて」参照。 by santapapa
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