タイム・マシン/80万年後の世界へSFの祖として知られるH・G・ウェルズの小説はそのイマジネーションの豊かさから多くが映画化されていますが、その小説の中でも代表的なものが『宇宙戦争』、そして『タイムマシン』でしょう。タイムマシンは一般的にも知られる言葉になっていて、サディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにおねがい」というヒット曲があったり、小林克也が「ベストヒットUSA」でロック・クラシックを紹介する時に「タイムマシーン!」と言ったりしてます(笑)。 1899年の大晦日、ロンドンに住む青年発明家ジョージ(ロッド・テイラー)は親しい友人を呼んで夕食会を開きますが、本人は客間に遅れて来た上によれよれになって登場します。そこでジョージが話し出したことは、過去と未来に自由に旅することの出来る機械=タイムマシンを作り上げたという話でした。客が帰った後で、ジョージはタイムマシンを動かして、1917年へ、そして1940年、1966年へと飛びます。ところが1966年にはロンドンは核戦争に巻き込まれて、危うく未来へ脱出したものの岩に囲まれたジョージはその場所での岩が開く未来まで飛ぶことにします。そしてジョージは計器の数字が80万年後を指した世界に降り立ちます・・・・・・。 H・G・ウェルズの「タイム・マシン」は近年原作者の曾孫のサイモン・ウェルズによって再映画化されていますが、こちらは『月世界旅行』や1953年の『宇宙戦争』の製作でおなじみのジョージ・パルが製作・監督を務めた1959年の作品です。1950年代から1960年代前半まで、優れたSF映画を世に送り出したジョージ・パルの代表作のひとつでもあるでしょう。 冒頭の多くの時計が闇の中を漂いながら流れて行き、ビッグ・ベンが大写しになるオープニング。初めて見た時にはまずここからしびれました。そして、タイム・マシンのデザイン。1899年という設定にあわせてビクトリア朝の風格のあるデザインになっています。レトロ・フューチャーといった感じで今見ても好きなデザインですね。メイクングを見ると随所にこだわったそうで、後ろの未来に行く時には時計回りをする円盤の淵の模様はしっかり365個にしているそうです。 また時間が進むのを表す描写が今見ると子供だましのような特殊撮影ですが、当時としては工夫に工夫を重ねた撮影だったことは想像に難くありません。ちなみにこの映画はアカデミーの特殊効果賞を受賞しています。その中でショー・ウィンドウのマネキンにつけた衣装で時間の経過を表すセンスが好きですねえ。また、本が手元で崩れ去るシーンなんかもちょっとしたシーンですが、心に軽い衝撃を与えてくれました。さすがにモーロックなんかはもうちょっと迫力がほしかった気がしますが(苦笑)。 冒険SF娯楽作でありながら、文明とは何かということも基調として流れていて、小さい頃に見ても心に残った映画ですね。本を読むことを忘れて久しく、周りのことや社会に一切無関心無気力な昼の未来人イーロイ。そして凶暴に残忍に同じ種から分かれたイーロイを襲う夜の未来人モーロック。ウェルズが80万年後に見た未来は、実はすぐそこまで来ているのかもしれません。 ウィーナを演じたイヴェット・ミミューがすごくかわいくて、ハートを刺されました。そういえば『深海征服』にも出ていたんですっけ(苦笑)。 特典として1981年に作られた、ロッド・テイラーによる47分にもわたる特典映像がついています。映画に使われたタイムマシンがオークションにかけられて、それをジョージ・パル監督の友人ボブが買い戻して修復する話は、ひとつのドキュメンタリー・ドラマですね。その後、このタイムマシンがカール・セーガンの『コスモス』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『グレムリン』などに「カメオ出演」していたとは知りませんでした。またラストは短いストーリーがあって、『タイムマシン』後日譚になっています。ちょっと切ない話です。そして、最後のクレジットに1980年5月2日に亡くなったジョージ・パル監督への献辞があって、またちょっと切なくなりましたねえ。 【タイム・マシン/80万年後の世界へ(THE TIME MACHINE) 1959年 USA】
by santapapa
| 2005-11-20 23:31
| 洋画一般
|
心に残る映画、ウキウキする映画、トホホな映画などについてをつれづれなるままにつづります。レビューは偏った主観なのでそこはそこで。トラックバックはカテゴリーの「トラックバックについて」参照。 by santapapa
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