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蜀山奇傅・天空の剣

蜀山奇傳 天空の剣

1983年に『妖刀・斬首剣』と共に、 香港武侠ワイヤー・アクションのスタンダードな形を作った記念碑的作品です。監督は徐克(ツイ・ハーク)で、パリ国際ファンタスティック映画祭で特撮賞を受賞したSF色の強い中国版・剣と魔法のファンタジー作品です。



5世紀の中国、戦乱に次ぐ世の中で西軍の明奇(元彪/ユン・ピョウ)は上官の仲違いが元で軍を追われ偶然であった東軍のふとっちょ(洪金寶/サモ・ハン・キンポー)と心を通わせますが、やがて東軍・西軍・謎の軍団と相乱れる戦いに巻き込まれて明奇はひとり、蜀山に迷い込んでしまいます。いかにも怪しい洞穴に入ったところ、そこは魔物の巣窟ではありませんか。腰を抜かして逃げ惑う明奇を助けたのは2本の秘剣を背に刺す南海派の剣士・丁引(鄭少秋/アダム・チェン)。明奇は丁引に弟子入りを願い出ますが、断られてしまいます。丁引は実は、この蜀山で魔神が生まれる兆候があり、その邪悪なものに支配されるのを防ぐために集まってきたのです。間もなく崑崙派当主の和尚(劉松仁/ダミアン・ラウ)が弟子の一真(孟海/マン・ホイ)を引き連れて現れますが、南海派と崑崙派はあまり仲がよくなさそうで協力体制も今一つ。明奇は年恰好も似た一真とすぐに仲良くなります。ところが魔物の攻撃によって和尚が怪我を負い、和尚は第18代当主に弟子の一真を指名。根が小心者の一真は「私はその器ではありません」と慌てます。魔神が生まれかかるのをその場に現れた長眉道人(洪金寶/サモ・ハン・キンポー)がその長眉と神鏡で食い止めます。しかしそのまま食い止めていても限界があり、北斗七星が移動する49日以内に天刀山の仙女・李亦奇(翁倩玉/ジュディ・オング)から紫青双剣を受け取ってこなければなりません。丁引は明奇、一真、そして怪我した和尚を連れて魔物の妨害を撥ね退けながら、天刀山を目指し、途中、和尚の怪我の治癒の為に女だけが守る幻城の城主(林青霞/ブリジット・リン)と会おうとします・・・・・・。

原作は中国の64巻にもなる伝奇小説に基づいているそうですが、まずとにかく飛びます。飛び回ります。今でこそ、武侠映画なんかで軽功を使うのをワイヤー・アクションで飛ぶことによって表現することが当たり前=お約束になっていますが、初めて見た時には結構インパクトがあったのではないかと思いますね。それに加えて『スター・ウォーズ』の特殊撮影にも参加したロバート・ブララックがSFXを担当。予算や製作時間の関係か、かなりチープな出来上がりですが、全編光線ビームを出して戦ったり、パチモン・ライトセイバーもどきが出たりしてます。これも今となってかなりチャチに感じますから、ツイ・ハーク監督も作り直したかったんでしょうが、当時としてはそれなりには健闘していた・・・・・・かも・・・・・・(苦笑)。

この映画、あらすじでは判りませんけど、実は結構全編コメディ・タッチです。1960年代が懐かしく思い出されるような小ネタばかりが随所に散りばめられていて、非常になごみます(笑)。

そしてこの映画の何がいいかと言うと、脚本と演技に異様なハイ=テンションによる勢いがあることです(笑)。90分の中にイベントをこれでもかと押し込んでいるものですから、冒頭の殺陣に始まり波乱の連続。それを演じる役者の熱さとテンションの高さが笑っちゃうぐらい尋常じゃありません(笑)。もちろん、ツッコミだけで一晩語り明かすぐらいツッコミ所はテンコ盛りなのですが、あのハイ=テンションのパワーには楽々押し切られてしまいますなあ(笑)。

ちなみに天刀山の仙女を演じたジュディ・オングは、もちろん皆さんご存知のあのジュディ・オングです。残念ながら歌は歌ってません。期待したのに(笑)。仙女にしては随分派手ですが、ジュディ・オングにしては随分地味な衣装で登場します(笑)。で、必死の思いで天刀山に辿り着いたユン・ピョウとマン・ホイは紫青双剣を授けられると同時に衣装も古装から戦闘服(?)に変身するのですが、なにせ仙女がジュディ・オングですので普通の目で見るにはとても恥ずかしい格好に(爆笑)。哀れ二人はヒップホップ系ディーバのバック・ダンサー風衣装を彷彿とさせるような、黒の布を上半身裸の身体に巻いたような姿で戦います(苦笑)。

幻城の城主を演じるブリジット・リンは凛とした佇まいが似合っていましたね。「ドキッ!女だらけの幻城」を束ねるのですから、それに充分なだけの威厳がありますね。

この人を忘れてはいけないのが、李賽鳳(ムーン・リー)。『チャンピオン鷹』より公開が早かったこの作品が実質、出演映画第2作目になるそうで、ティーン・エイジの初々しいムーン・リーが幻城の剣士に扮しています。か、かわいい!後半はそれなりに活躍してくれるのも嬉しいです。

他にはサモ・ハン・キンポーの東軍ふとっちょ剣士と長眉道人の一人二役、ちょっとしか出ないのに任我行っぽい強力な濃いキャラクター天刀で印象を残す徐少強(チョイ・シウキョン)もあります。ラストでふとっちょ剣士サモ・ハンに刀で押さえつけられて、カメラ目線で振り向く西軍の兵士って、どう見ても出たがりのツイ・ハークですわな(爆笑)。

この映画、別編集の『Zu Time Warrior』というインターナショナル・バージョンもあるという話で、現代を絡めたユン・ピョウとムーン・リーとのラブ・ロマンスがあるという噂です。見てみたいですなあ。

18年後にCGをバリバリ使って、ストーリーも新たにセルフ・リメイクされた『天上の剣 The Legend of ZU』についてはまた後日。


【蜀山奇傅・天空の剣(蜀山: 新蜀山剣侠/ZU WARRIORS FROM MAGIC MOUNTAIN) 1983年 香港】
by santapapa | 2005-10-24 23:36 | 香港(中国・台湾)映画
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