美しい夏キリシマ

美しい夏 キリシマ

九州の南東部に位置する霧島は高い山が連なり風光明媚で有名なところです。その名前の由来については、日本神話の中で伊弉諾尊と伊弉冉尊が天の浮橋から天の逆鉾で霧の海を探ってこの地を見つけたので霧島と名付けたとされる説や、霧や霧氷が多いことに由来する説などがあるそうです。晴れの日も雨の日も、ずっと何百年も変わらずに人の前にその姿を見せていたに違いありません。



1945年8月・終戦直前の霧島で、中学三年の日高康夫(柄本佑)は、満州に住む両親を別れて厳格な祖父・日高重徳(原田芳雄)と祖母・日高しげ(左時枝)の元に世話になっていました。康夫はかつて働いていた工場が空襲に見舞われた時に目の前で爆死した親友を見殺しにして逃げたという罪悪感に苦しめられていて、また身体を壊して肺浸潤を診断されて学校にも行けないでいたのです。従姉の世津子(平岩紙)は密かにそんな康夫に思いを寄せていました。また村には大陸から引き揚げた兵士たちが駐屯していて、沖縄が陥落した今、南九州での本土決戦に備えて演習をやっています。その中のひとりである豊島一等兵(香川照之)は、日高家の奉公人であるなつ(小田エリカ)の母である宮脇イネ(石田えり)と密会を重ねていました。日高家のもうひとりの奉公人・はる(中島ひろ子)は、重徳の強い勧めで戦地で片足を失い帰国した秀行(寺島進)と結婚することになります。はるの祝言に合わせて、嫁ぎ先の都城から里帰りした康夫の叔母・美也子(牧瀬里穂)は、出撃を控えた海軍少尉・浅井(眞島秀和)と密かに想いを通わせていたのですが、遂に彼を戦地へ送り出す日が来てしまいます。そんなある日、以前の工場での空襲で見殺しにしてしまった友人の幼い妹・波(山口このみ)に許しを乞いに行った康夫は、彼女に兄の仇を討つように言われますがどうしたらいいかわからないまま終戦を迎えます・・・・・・。

黒木和雄監督が『TOMORROW 明日』に続いて終戦直前をテーマに描いた映画です。九州は霧島を舞台にして終戦直前の15歳の多感な少年を中心に、その時代にそこに息づく人を描くことによって戦闘シーンを一切出さずに戦争を描いています。黒木和雄監督自身宮崎出身だということで、本人の少年時代の体験が元になっているとうことだそうです。

映画の中で何度も出てくる霧島の山の風景。私自身も幼少の頃は九州の山で育った子供でしたので、山の緑や空と雲の感じなどの景色や回りの空気にとてもなじみがあって、大変懐かしい感じがしました。そのままスクリーンに入っていけるような気もするぐらいです。そういう中で、終戦間際に息づいた生活観溢れる人々の姿が身近に感じて、戦争が市井の人々にもたらしたものが何だったのか、そして生きることと死ぬことについてを見せてくれました。『TOMORROW 明日』もそうでしたが、これも時間の中で熟してじわじわと染みてくる映画です。心に残るシーンは色々とありますが、屋根の上のシーンなどは特に印象に残っています。この映画も多くの人に見てもらいたい映画のひとつです。


【美しい夏キリシマ 2003年 日本】
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by santapapa | 2005-09-02 23:01 | 邦画
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