酒とバラの日々

酒とバラの日々

時を経てだんだん味わいが増すお酒のように、味わいが増していく映画とういうものがありますが、『酒とバラの日々』は私にとってそういう映画のひとつです。



サン・フランシスコにある宣伝会社に務める酒好きのジョー・クレイ(ジャック・レモン)は、パーティの企画でで得意先の会社の秘書カーステン・アーセン(リー・レミック)と出会います。最初は勘違いでカーステンを怒らせてしまったジョーですが、詫びて食事に誘ったのを気に急速に仲良くなっていきます。チョコレートが大好きでお酒が飲めないカーステンにジョーはお酒の味を教えたり、カーステンのアパートを訪ねたりして、ふたりは結婚。カーステンは植物園を経営する一人暮らしのエリス(チャールズ・ビックフォード)にジョーを紹介しますが、父はコーとの結婚にあまりいい顔をしませんでした。幸福な月日が流れて、ふたりの間にはデビー(デビー・メグワン)という女の子も生まれて新婚生活は順風満帆と思われましたが、ジョーの酒量は次第に増えて、仕事にも差しさわりが出るようになります。カーステンも家で当り散らすようになったジョーにつき合ってだんだんお酒を飲むようになっていきます・・・・・・。

ブレイク・エドワーズ監督による1962年の映画でこれ以降はだんだんコメディが主体になっていきますが、『酒とバラの日々』では社会派の一面も見せた映画です。

またこの映画を機にジャック・レモンは性格俳優として名を上げていきますが、この映画での鬼気迫る演技は迫真に満ちて怖さを感じさせます。特にエリスの植物園の温室で夜中に酒を探すシーンや、病院で拘束されているシーンなどは、あまりの迫力に見ている方が痛々しい気持ちになるような場面です。同様にリー・レミックもチョコレートが大好きな乙女から、次第にお酒が手放せなくなるようになる変化を見事に演じています。

アルコール依存症をテーマにした痛々しい物語なのですが、映画の根底に流れているのが夫婦の情愛で、そのどうしようもない部分に心が締めつけられます。映画の中で何度か出てくるカーステンの両親から聞いたという乾杯の文句の意味と、デビーの存在がまたそれに深みを与えています。母が若い頃にこの映画を見た時に「バカバカしい。すぐに別れればいいのに」と思ったそうですが、夫婦生活が長くなってから見て、この映画に対する印象は大きく変わったそうです。同じように、私も若い頃に見た時と結婚してから見た時とでは、印象がだんだん変わってきました。今日でまたひとつ歳を重ねたのですが、歳をとるということはまた経験によって1年分の何かを得ることではないかと私は思っています。

音楽はヘンリー・マンシーニ。美しいテーマ曲はアカデミー賞を受賞、スタンダードとしても人気があります。この美しいテーマ曲が凄惨な話と相まって効果を大きく上げています。以前にも書きましたが、タイトルと曲の美しさからよく結婚式なんかでも演奏されたりするのですが、映画の内容を知っている者にとってはちょっと考えてしまいますよね。


【酒とバラの日々(Days of Wine and Roses) 1962年 USA】
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by santapapa | 2005-08-01 22:32 | 洋画一般
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