潜水艦イ-57降伏せず

潜水艦イ-57降伏せず

「潜水艦映画にハズレなし」とはよく言われる言葉ですが、この映画は数ある潜水艦映画の中でも隠れた名作であるのではないでしょうか。



第二次世界大戦の最末期の1945年の初夏、数々の戦績を上げた日本の潜水艦イ-57はマレー半島のペナン基地に回航を命ぜられます。艦長である河本少佐(池部良)は、東京から来た横田軍司令部参謀(藤田進)にそこで極秘指令を受けます。内容は「連合国との和平工作を推進するために、連合国の外交官をスペイン領カナリー諸島に輸送せよ」というもので、目的は大本営の参謀が日本の敗戦時のダメージを少しでも軽くするために和平交渉を有利に行うためでした。生粋の軍人である河本少佐はその内容に反発をしましたが、日本を救うためだと言う横田参謀の涙の説得にこの指令を受けます。河本少佐は内容が内容だけに腹心の先任将校・志村大尉(三橋達也)にだけ極秘計画の真意を伝えると、準備を整えてペナン基地を出ます。洋上で船と落ち合って件の外交官を迎えますが、乗り込んできたのは外交官のベルジエ(アンドリュー・ヒューズ)のみならず、父の健康を心配して不満ながら同乗した妙齢の娘ミレーヌ(マリア・ラウレンティ)も一緒でした・・・・・・。

春先に『ローレライ』が公開になった時に再び脚光を浴びた、邦画の潜水艦映画としては代表作ともいえる作品です。監督は松林宗恵、特技監督は円谷英二、音楽が團伊玖磨と、2年後に隠れた名作『世界大戦争』を作るスタッフがここに集結していますね。全編モノクロームの映像ですが、邦画の元気がよかった時代の熱さを感じさせてくれます。

脚本がよく練られているのと、また演出がよいからでしょうか、観る者を惹きつける展開とリアリティが見事です。ペナンからカナリー諸島まで行くのに必要な燃料を積むために限られた精鋭のメンバーと6本に限定された魚雷。しかもその燃料は片道のみで、帰りは現地での補給船頼み。艦長以下、和平交渉には軍人としては絶対反対でいながら、艦長への信頼を胸にあくまでも指令を全うするために最大限の努力を尽くすクルーたち。和平交渉に乗り込んだ外交官と予想外の「荷物」であるその娘(今で言うところの「ツンデレ」でしょうか(笑))。思わず引き込まれてしまう設定です。

艦内での描写も、細かい積み重ねでリアリティを出しているところが見事です。垢すり競争や女性の乗艦に色めき立つクルー、飯炊き、ペット、船酔い、貴重な水、氷を作るために止める冷房とその暑さの描写と、説得力をもつ映像になっています。戦後僅か14年の時期に作られたということもあって、今現在の人間としては相容れないものがあっても、当時の軍人ならそう選択したであろう行動もリアリティがあります。その中に織り込まれているヒューマニズムは、また時代を体験してその悲惨さを繰り返さないようにという気持ちが、後の『世界大戦争』同様に込められているのではないかと思います。もちろん娯楽大作としても充分惹かれる映画でもある作品でした。


【潜水艦イ-57降伏せず 1959年 日本】
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by santapapa | 2005-07-21 22:01 | 邦画
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