華氏451

華氏451

小さい頃は転校が多く急には新しい友人に馴染めなかったので、内向的な私にとっては本が大事な友達でした。その中でもSFには特にハマってしまいまして、大学になった頃にはSF研究会がなかったので古典の先生を顧問にお願いして設立したぐらいです。当時はなけなしの小遣いを握り締めて、早川文庫や創元文庫の目録をなめるように読んで、1時間も2時間も悩んでレジに本を持っていったものでした。



SFの中でもよく読んだ作家のひとりにレイ・ブラッドベリがいます。そのブラッドベリの長編をフランソワ・トリュフォー監督が映画化したのが、『華氏451』です(原題:『FAHRENHEIT451』)。華氏という単位は一般にはなじみがないかもしれませんが、G. D. ファーレンハイトが1717年ごろに製作した水銀温度計が元で,水・氷・食塩を混ぜて得られる温度を0度、体温を96度と基準とした温度です。もちろん体温は変動しますから今ではもっと厳密な測定で値を決めています。そして1942年に A. セルシウスが氷の融点を0度、水の沸点を100度とする摂氏温度目盛(セルシウス度)を提唱して、これが現在日本で使われている温度の単位です。USAで使われている単位は未だにヤード=ポンド法が主流で、温度も華氏が使われているそうです。

で華氏451度は摂氏でいえば約233度、紙が発火する温度のことです。時代設定は当時からみた近未来。その世界ではすべてテレビからの情報でしか知識を得ることが出来ず、を本を読むことはおろか所持することも一切禁止。もし本を所持していることが見つかると消防士が駆けつけて全ての本は没収され、焼かれることになります。自由な時間に自由なものを読める次世代に知識を伝える本という選択肢を閉ざし受動的な情報しか与えない社会で、本に興味をもった昇進前の消防士・モンターグの行動を描いています。

原作が書かれたのが'50年代、作者が持っていた危機感はある部分では今現実になっているといえるし、この先でますますこの危機が進行していかないという保証はありません。50年経った今も現在のテーマとして感じられる作品です。

なにせ映画が撮られたのが60年代ですので、近未来の風景は今ではいささかチャチに見えます。昔、少年ドラマシリーズで見たようなテイストに近い風景です。ただトリュフォー監督の美学なのか、端整できれいな映像が印象に残ります。中でも森の中のシーン、特にラストの雪の風景が心に残ります。それをバーナード・ハーマンの弦楽を中心とした新ウィーン楽派を思わせる繊細な曲がしっかりと支えています。

しかし消防士が本を燃やしてまわるなんて皮肉というか、火消しに登板したマイヤーズが連打されて火だるまになるぐらい腹立たしい(阪神ファン限定)ことですな(苦笑)。

【華氏451度(FAHRENHEIT451) 1966年 UK/フランス】
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by santapapa | 2004-09-15 00:32 | 洋画一般
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