地球の静止する日

地球の静止する日

1951年に作られたロバート・ワイズ監督のSF映画の古典であり、同時に金字塔とも言える作品です。



1950年頃、宇宙空間から地球に向かって信じられない高速で空飛ぶ円盤が飛来してきます。銀色に光るその未知の宇宙船はワシントンの広場に着陸。警戒する軍隊が見守る中、宇宙船の中から光る服とヘルメットを装着した宇宙人クラートゥ(マイケル・レニー)が出てきます。ヘルメットを取ったクラートゥは地球人男性と同じような姿をし、英語で、他の惑星から来て危害を加えることはないと説明しますが、兵のひとりが発砲。クラートゥは重症を追って倒れてしまいます。すると宇宙船の中から巨大なロボット・ゴートが現われて、軍隊の持つ武器を次々に消却していきました。驚く地球人。クラートゥはロボットを押し止め、近くの病院に運ばれます。そこでクラートゥは大統領秘書に、地球人がこのまま争いを続けていればやがて他の星に災いを及ぼしかねないと見られて他の星からの攻撃を受けることになると、各国の指導者が揃った場で忠告したいと申し出ます。しかし世界が東西対立の冷戦状態にあり、調整は困難を極めます・・・・・・。

この当時、宇宙人が出てくる映画と言うと侵略してきてドンパチが始まる映画が多かったりしますが、この映画はそれらとは一線を画していて、友好的であるようにと諭すためにやってきます。

この時期は第二次世界大戦が終結してから6年しか経っていないのですが、終戦直後からの東西対立が激化してきた頃です。1947年のトルーマン=ドクトリンとマーシャル=プラン、ドイツ分割、1948年のコメコン設立とチェコ革命、ベルリン封鎖、1950年の朝鮮戦争勃発と、世界は新たな世界戦争の影を感じざるをえなくなってきた時代になります。それと平行して1949年にはソビエト連邦が秘密裡に原爆実験成功したことが公に知られ、1951年頭には水爆保有命令を発表して開発に着手します。

1950年の朝鮮戦争では11月にマッカーサーが状況によっては原爆の使用を示唆、それを受けてトルーマン大統領は「米国は朝鮮における軍事的情勢に対応するため,原爆を含めすべての軍事力を行使する。自分はマッカーサー元帥を強力に支持する」と発言。「ストックホルム・アピール」署名運動により、世界で5億の人々が署名し、また直後にロンドンでアトリー英首相、プレヴァン仏首相の緊急会談が組まれ、マッカーサーに原爆を使用させないという合意事項を持ってアトリー首相がトルーマン大統領と交渉をします。

同時にこの時期は共和党のジョセフ・マッカーシーらが中心となって組織された委員会HUACによって、「赤狩り」が大々的に行われました。この委員会においては有名人を召喚することが世間に対して大きなアピールになるので、ハリウッド映画界は格好の標的になったのです。時代背景もありマス・ヒステリーの世相の中で、反戦思想を持っているというだけで召喚されるこの委員会は恐れられ、誤解や密告などもあって事実上言論の弾圧が強い時代で、またチャールズ・チャップリンなど多くの人がハリウッドを追放されました。ちなみにリチャード・ニクソン下院議員がこの委員会に属していたことは、よく知られています。

この映画はこういう時代に作られました。決して派手さはないのですが、サスペンス仕立てにもなっていて見所がありますし、平和を願うメッセージが込められています。空飛ぶ円盤、宇宙服、巨大ロボット・ゴートなど、デザインも大変よく、未来感覚あふれる造型でした。

音楽はバーナード・ハーマンで、テルミンを使っていることでも有名です。映画『テルミン』でもこの映画のシーンが紹介されていました。


ちなみにリンゴ・スターの1974年のアルバム、『Goodnight Vienna』のLPジャケットのデザインは、この映画をモチーフにしています。


Goodnight Vienna



【地球の静止する日(The Day the Earth Stood Still) 1951年 USA】
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by santapapa | 2005-03-31 21:35 | 洋画一般
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