超高層のあけぼの
構造工学科という因果な学科(笑)で学んだために、機械・建築・土木に関する知り合いを多く持ちました。昔は土木を目指した人には映画『黒部の太陽』(1968)を見た人が少なくなく、また『サンダーバード』が非常に好きだったりしています。建築を目指した人は霞ヶ関ビルの物語である東映の『超高層のあけぼの』を見た人も少なくありません。
帝大学生の古川(山本豊三)は関東大震災の直後に瓦磔の中に立つ上野の五重塔を見て、祖先が残した耐震技術の偉大さを感じ、研究を志します。四十年後に東京大学の教授として耐震建築の世界的権威となった古川(中村伸郎)は、鹿島建設会長(佐野周二)の肝いりで佐伯構造設計課長(木村功)などと共に、柔構造超高層ビルの設計にとりかかります。新しい技術を開発して数々の実験を成功させて、いよいよ江尻所長(池部良)、松本所長代理(鈴木瑞穂)の率いる数多くの人々は前人未到の超高層ビルの建設に着手します・・・・・・。 シンガポールのように岩盤が固く地震が少ない場所であればともかく、日本の場合には地震が多く地盤面との兼ね合いで高いビルを建てることは難しいと考えられていて、1919年に法律で制定された建築物の高さ制限は31m未満とされていました。31mという数字は100尺から出てきたという話です。そのためにかつてはビルが多く建っている場所では、9階建のものが多かったりしていました。そのうちに柔構造理論により高層ビルも技術的に可能と考えられるようになり、1963年には高さ制限が撤廃、日本初の超高層ビルとして東京の霞が関に地上36階建、高さ147mの霞ヶ関ビルが1965年3月に起工されました。この映画は日本が高度成長期にあった1968年に竣工した、当時日本一の高さを誇るビルの建設をテーマに東映が映画化したものです。 今でこそ都会では摩天楼(笑)と言われる超高層ビルは珍しくありませんが、霞ヶ関ビルが建った当時は頭ひとつどころかふたつもみっつも突き出たビルだったので、これまでのノウハウでは判らない部分もあり、また当時は超高層ビルを立てるのに1フロア作るのにつき1人の犠牲者が出るなどと実しやかに噂されていた頃ですので、未知の世界に踏み出すようなものでした。このビルで初めて採用されたH型鋼やプレハブ工法は、今では当たり前の技術として息づいています。この映画では数々の実験を重ねる描写や現場で働く人々を映し出し、完成したビルを見ているだけでは判らない、まさに多くの人の手によって作られていることが描写されています。 出演者も他に丹波哲郎、田村正和、松本幸四郎(8代目)、小林昭二、小林稔侍等々が出演。162分もある長尺の映画ですが、ものを作り上げる苦労と感動もあり、興味のある向きには目が離せない映画でした。 【超高層のあけぼの 1969年 日本】
by santapapa
| 2005-03-27 20:42
| 邦画
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心に残る映画、ウキウキする映画、トホホな映画などについてをつれづれなるままにつづります。レビューは偏った主観なのでそこはそこで。トラックバックはカテゴリーの「トラックバックについて」参照。 by santapapa
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