冷戦

冷戦

冷戦というと20世紀後半の東西冷戦を思いおこす言葉ですが、この映画はそれとは何の関係もありません。原題が『九龍冰室』となっていて、冰室とはどうやら香港独自の喫茶と食堂を併せたようなところのようです。



一人の男が足を引きずりながら香港にある九龍カフェを訪ねてきます。男の名はロン(鄭伊健/イーキン・チェン)。かつてはその類稀なる活躍で裏社会で名をあげたロンですが、6年前にタイの要人の暗殺に失敗して足に怪我を負って、ボスの裏切りで逮捕されてしまい、獄中で刑期を過ごした後に親友のホン(林雪/ラム・シュー)を慕って九龍カフェに帰ってきたのでした。父親を悲しませ恋人に辛い目を見せたことで、ヤクザな世界につくづく嫌気がさしたロンはカタギになって働こうと決心します。ところが、かつての子分たちやロンに憬れる若者が彼を慕って集まって来て、ロンの人望を知る裏の顔役のフォーサン(呂頌賢/ジャッキー・ロイ)などは警戒を強めます。かつての恋人ヘレン(莫文蔚/カレン・モク)との間に生まれた子供シウロン(譚偉豪/タム・ワイホウ)を引き取ってよき父親になろうと思い、「自分はもう二度とヤクザな世界に戻る気はない」と宣言するロンですが、そんな彼の意思とは関係なく周りの人間はそれぞれの思惑で次第にロンを引きずり込んで行きます・・・・・・。

any's cinediaryさまのblogでイーキン・チェン応援企画をやっているので、その便乗ということでお気に入りのイーキン・チェン主演作を1本。「イーキン・チェン、渋くてかっこいいっす」と思った映画です。

『星願』『東京攻略』『芭[口拉]芭[口拉]櫻の花』などを手がけた馬楚成(ジングル・マ)監督の2001年の作品。監督本人は「いろいろと詰め込みすぎて失敗した」とか言っているそうですが、そうでもないのでは。こういう人情の機微を描くのが上手い監督ですので、この映画でも主人公のみならず、登場人物それぞれの視点や思惑が判るように作られています。

ストーリーを見ればお分かりのように、足抜けをしようとしても周りがさせてくれないというヤクザ映画ではよくある形の話です。まさしく直球勝負。その中で心揺さぶられるのは、イーキン・チェン扮するロンが自分がこれまでにやってきた取り返しのつかないことを省みながら、一人の大人として子供のために生きようとする真摯な姿勢でしょう。図らずとも親となり、子供を信じて小さな幸せを守っていこうとするロンに頼れる大人としてのかっこよさが垣間見えます。

もちろん過去を振り返るシーンを含めて、随所にアクション・シーンがあるのはさすがは香港映画ですね。冒頭の色彩感あふれるタイでのシーンは派手な立ち回りを見せてくれるし、透明の雨ガッパを着て暴れるシーンや大勢がパイプをガードレールに打ちつけるシーンではジングル・マらしい映像美を感じます。そういえば途中、出てくる病院は『星願』の舞台だったところだそうです。

カレン・モクが、昔の恋人として憎まれ役の姉御を好演。若い頃と現在の演じ分けや、さりげない表情はさすがですね。しっとりとした挿入歌も歌っていて、これがまた雰囲気いい曲です。他にも脇を固める俳優陣の演技が光っていて緊張感を高めています。子供はちょっと棒読みですが(苦笑)、その朴訥とした感じがかわいいから許します(笑)。

冒頭でも触れましたが邦題の『冷戦』というのはなんかイメージが違う感じで残念です。少なくとも日本語でいうところの冷戦という意味があてはまる場面はあまりありませんでした。そのタイトルも含めて全般に地味に感じられるかもしれませんが、心に残る佳作だと思います。


【冷戦(九龍冰室/GOODBYE MR. COOL) 2001年 香港】
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by santapapa | 2005-02-22 01:40 | 香港(中国・台湾)映画
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