一杯のかけそば

人の数だけ好みがあると言われているように、人によって食べ物や音や色の好みは千差万別。育った環境や性格が違う以上、当然だと思います。その一方、感動の共有ができない時は残念に思うこともしばしばあります。



1970年頃のお話。大晦日の夜に、ノレンを降ろしたそば屋「北海亭」を3人母子が訪ねて来て、すまなそうにかけそばを一杯だけ注文をしました。その一杯を3人で分けて食べるとお代を置いて帰っていきます。その後も、毎年大晦日になると、ノレンを降ろした頃に母子は「北海亭」にやって来て一杯のかけそばを3人で分けて食べることが恒例となり、「北海亭」の夫婦はいつしか大晦日に3人が来るのを心待ちにするようになりました・・・・・・。

1989年に栗良平が書いた短編小説が原作です。この小説は当時、なぜかバカ売れ。私も図書館で借りて読んでみたのですが、「悪い話じゃないな」と思ったものの、どうも感動のツボがわかりませんでした。どうもこのあたり世間と感性のズレがあるのか、「電車男」もネット上で読んで「ふ~ん」と思った程度だったし、「世界の中心で、愛をさけぶ」も「へえ、次作は『「悔い改めよ、ハーレクィン!」と言うチクタクマン』てなタイトルになるんかいな?」程度の感想しか出てきませんでした。『アイアン・ジャイアント』とか『黄昏』とか、ベタな『星願』『サルサ!』とかは見て泣いちゃうので、無感動であるのではないと思うので、どうもどこかツボがずれてるようです。

邦画の侮れないところは、この短い小説を99分の1本の映画に仕立ててしまうところです。昔からヒット曲が出たら、そのタイトルと歌詞の内容を拝借して1時間半の映画を1本でっちあげてしまう(しかも売れてる余韻がなくならないように短期間で)だけのスキルを持っている日本映画界ですから、こんなのは朝飯前です。

でその肉付けの仕方がすごいです。

1.最初と最後が子犬のアニメーションで、一瞬何が起こったのかと観客を幻惑します。
2.そば屋の常連の客がいつも飲んで騒いで、まるで居酒屋状態です。
3.なんと「ニセかけそば親子」が登場して、現代の報道過剰な社会に警鐘を鳴らします。
4.身の上話の中では、一家の大黒柱の起こした事故から義理の兄弟にいじめられたり、弟がカミナリ族に入ったりととても大変です。
5.(ネタばれ)ラストでは亡くなった大黒柱の父の分も含めて「かけ4丁」と感動が33%増しです。

・・・・・・残念ながらこの映画は原作にも増して私の心の琴線を震わせるに至らず、一瞬しか出てこなかった「ニセかけそば親子」だけがなぜか印象に残ってます(苦笑)。

実はこの映画、内緒ですが1年中クリスマス・バンドSOCKSのアニー速人がチョイ役で出演してます(笑)。


【一杯のかけそば 1992年 日本】
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by santapapa | 2005-01-06 23:21 | 邦画
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