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サルサ!

サルサ!

サルサ(salsa)とはスペイン語でソースのこと。言葉のニュアンスとしてはクロスオーバー、フュージョンに近いでしょうか。キューバのソンから発展したラテン音楽の一ジャンルとして多くの人に愛されています。



フランスのパリで行われているクラシック・ピアノの音楽コンクール。参加者の一人レミ(ヴァンサン・ルクール)は奨学金がかかったコンクールであるにもかかわらず、課題曲の演奏を途中でやめてモントゥーノを弾き始めてしまいます。クラシックと訣別したレミは大好きでたまらないサルサにどっぷりとつかろうとしますが、ムラ-タと違い肌の色が白いために逆に偏見の目でみられることに。やがてレミはキューバ人の友人からキューバ訛りを教わり、肌の色を褐色にして「モンゴ」と名乗りサルサダンスのレッスンを始めます。そして祖母の薦めでそこへやってきたナタリー(クリスティアンヌ・グゥ)と恋に落ちます・・・・・・。

もう涙腺がゆるいもんで、映画館で見たキューバでのラスト・シーンでは分かっているのに思わず心の中で「わー!」と叫んで不覚にも涙がこぼれてしまいました。なんてことがないありがちなラストなんですが、「サルサこそ最高!」と歌うシエラ・マエストラの音楽がこの上なくすばらしい!自分の中では、ステージと観客がサルサで一体となった背景をバックにして恋の1ページを刻んだ名シーンだと思います。監督が一番見せたかったのも、きっとこの最後のシーンではないでしょうか。

私がサルサを知ったのは、NHK-FMで日曜日の午前中にやっていた世界の音楽の第一部で、竹村淳の放送を聴いていたのがきっかけです。サルサ特集でファニア・オールスターズの曲なんかがかかっているのをエア・チェックして、その後、日本のオルケススタ・デル・ソルのレコード「ハラジュク・ライブ」なんかを聴いてはまっていきました。オルケスタ・ア・ラ・ヘンテというサルサのオルケスタに5年ほど在籍して、ツク・バンバンというグループの結成に立ち会ったこともあって、サルサには多くのいろんな思い出があります。それだけにサルサが好きで好きでたまらないというレミの気持ちはすごく分かるものがありました。

この映画ではサルサに対する感情の描き方がうまいですね。いくらピアノがうまいと言っても、ピアノのモントゥーノ(サルサ特有のピアノのシーケンス・フレーズ)のフレーズだけを弾くにしてもかなりの努力が必要ですし、その上リズムが出せるようになるにはよっぽど好きでないとできないことです。また、キューバ人になりたいという憧憬は、音楽にどっぷりハマった人間には痛いほどわかる感情ではないでしょうか。ミンストレル・ショーしかり、ブルースにはまって黒人になりたいと思う人しかり。ナット・ヘンホフの「ジャズ・カントリー」という素晴らしい小説がありますが、そこでも主人公はジャズにハマって黒人になりたいと思う場面もありますし、久石譲は自分の大好きなクインシー・ジョーンズについて「ブラック・コンテンポラリーの原点を持っていていつでもそこに帰れるのがうらやましい」と語っていたりします。その一方でドイツや日本からも世界に通用するサルサのオルケスタが出てきたりしています。

「なぜいつもハッピーでいられる?」
「幸せだと思うのか?いいか、レミ。キューバ人になりたいのなら苦しみは笑いで隠せ」
という会話がすごく印象に残っています。

また、ナタリーの祖母の恋の話もじーんと来ましたね。娘に踊りを教えるシーンとか、とても魅力的なおばあちゃんに描かれていきます。昔の恋人と再会するのに部屋の入り口にあった鏡をじっと見つめてしまう場面が切ないです。

レミがバンドにピアノで加入するのが決まってチューチョの家で祝杯をあげるシーンが好きです。みんなで意気投合して歌う場面。集まった時にみなで一緒に歌える歌が「六甲颪」(しかも阪神ファン限定)しかない人間にとって、こういう共有の宝があるというのはすごくうらやましいです。

傑作なのが、イビキとハンモックのきしみと隣の部屋でのニャンニャンを聴きながら、新曲を思いつくところ。いかにもありそうです(笑)。またピアノで曲を作りながらリハーサルのシーンになって、クラブでの演奏シーンに流れていくところがスムースで、「わかっているなあ」と感心させられることしきり。

ちなみに、『サルサ/灼熱のふたり』というのは1988年のまた別の映画で、またの機会に。


【サルサ!(salsa)1999年 フランス・スペイン】
by santapapa | 2005-01-02 18:01 | 洋画一般
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