遠い空の向こうに人は太古の昔から大空を翔ることに大きな夢を持っていました。遠い空の向こうに飛んで行けたらと、長い長い間、多くの人が憧れていたのではないでしょうか。 1957年にソ連の人工衛星スプートニクを見たウェスト・ヴァージニア州の炭鉱町コールウッドに住む高校生ホーマーは、自分もロケットを打ち上げたいと思い立ちます。早速友人を説得して仲間に引き入れて、ロケットを作ってみては飛ばしますが失敗に次ぐ失敗の連続。地元の炭鉱の責任者であるホーマーの父ジョンは息子の行動に理解を示さず、親子は対立してしまいます。唯一の理解者である学校の物理教師のライリー先生は、ロケットが成功して全米科学コンテストに出て優勝すれば、ヴァージニア州立大学への奨学金が出ると言って、彼らを励まします・・・・・・。 ちょうど同じ年に作られた映画『アイアン・ジャイアント』もソ連の人工衛星スプートニクが打ち上げられた1957年が舞台ですが、『遠い空の向こうに』のジョー・ジョンストン監督はその『アイアン・ジャイアント』のデザインも手がけています。『アイアン・ジャイアント』は「なりたい自分になる」というのがひとつのテーマでしたが、この『遠い空の向こうに』も夢を持ち続けてそれを強く追い求めていく映画です。特に根が技術屋肌の人間にとっては非常に同感できる部分が多く、ぐいぐいと引き込まれていくものがありました。中でも全国大会で「あこがれの人」に声をかけてもらうシーンがたまりませんでした。 原作はNASAの元エンジニアであるホーマー・ヒッカム・ジュニアの自伝である『ロケット・ボーイズ』。このほとんどの部分が映画化されています。原作のエピローグにある父親が印をつけていたというアンジェロ・デ・ポンチアノの詩にはぐっとくるものがありました。 この当時はまだ父親の仕事を継ぐという考えが割と一般的だったので、それを経済的に自立していない子供が拒否することはなかなか難しいことだったようです。最近文庫で出た『神様。仏様、稲尾様 私の履歴書』という西鉄ライオンズの不世出の投手・稲尾和久の自伝でも、同じ時代の日本の話ですが進学進路で親の漁師の仕事を継がないで夢を追う難しさについても触れています。 また時代背景からすると、1960年前後の石炭から石油にエネルギーが切り替わる前、所謂エネルギー革命前夜のお話です。この頃、「黒い米」、「黒ダイヤ」と呼ばれた石炭は重工業の発達と共に産業の重要な基幹を握るエネルギーでした。当然そのエネルギーの確保が重要になってきますが、その石炭を掘るということは暗く空気のよくない場所で、粉塵を吸いながら重労働に従事するという極めて劣悪な環境の中での作業でした。その上、出水、落盤、爆発などの危険が大きく伴う仕事であった訳です。そんな中でホーマーの父のような人間を支えていたのは、自分たちが産業を支えているといった誇りではないかと思います。そして、ホーマーも炭鉱で働くことによってそんな父の生き方を少し理解できるようになっていきます。 ちなみに映画の原題「October Sky」は原作「Rocket Boys」のアナグラム(文字の順序を換えて別の意味にする)になっているという凝ったタイトルです。野球ファンとしては「ロケット・ボーイズ」と聞くとヤクルト・スワローズの豪腕コンビ、石井弘寿投手と五十嵐亮太投手を思い出してしまいますが(苦笑)。 この映画が好きな人には、川端裕人の小説『夏のロケット』と、あさりよしとおのマンガ『なつのロケット』をおすすめします。どちらも 『遠い空の向こうに』リスペクトのお話で、思わずニヤリとして思わず心温まることうけあいです。 ●「野田篤司のホームページ」より「なつのロケットは本当に飛ぶか!?」 【遠い空の向こうに(October Sky) 1999年 USA】
by santapapa
| 2004-12-13 23:34
| 洋画一般
|
心に残る映画、ウキウキする映画、トホホな映画などについてをつれづれなるままにつづります。レビューは偏った主観なのでそこはそこで。トラックバックはカテゴリーの「トラックバックについて」参照。 by santapapa
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